ペルセウス


 
おかしい。
絶対におかしい。
 
004はゆっくり体を起こすと、鋭く四方を見回した。
今、確かに右手の人差し指がチリッと痛んだ。
人の気配はない。
 
だが。
もし、アイツなのだとしたら、気配など感じさせるはずもないのだ。
 
まさか、と思う。
非常識だ。
というか、正気の沙汰ではない。
 
だが、009のアタマにおよそ常識という概念がないのは、もう何度も経験済みだった。
特に、戦闘時には。
 
004はついに通信を開いた。
 
「こちら004…008?」
「008だ…どうした?」
「009はソコにいるのか?」
 
しばらく沈黙があった。
 
「いない。…けど、まさか…?」
 
あきれたような008の声に、004は思わずカッとして怒鳴った。
 
「馬鹿やろう!それならさっさと連絡しろ!」
「いや、だって…彼は、俺たちよりずっと先行して攻撃している…はずだ。たしかに予定より暴走気味ではあるけど」
 
008は冷静だった。
 
「その先行している…ってのは、002だけじゃないのか?」
「まあ、その可能性もないとはいえない…かな」
 
でも、それならむしろ俺たちより、そっちにいる003の方が正確に状況を把握できるんじゃないか?と008は言った。
たしかに…その通りだ。
フツウなら。
 
「…004、どういうこと?」
 
二人の通信に気づき、不安そうに見上げる003に、004は黙って肩をすくめた。
 
 
 
それは、ひと月ほど前のちょっとしたハプニングから始まった。
 
003が敵の手に落ちた。
しかも、近くに004と009がいるときに。
 
相手はそれほどの強敵というわけではなく。
むしろ、戦いとしては楽勝の部類に入るものだった。
油断したわけではない、だが……
 
彼らは、生身の少女を庇いながら戦っていた。
 
そのミッションの目的は、BGに拉致された立花博士を救出することだった。
が、突入した基地には立花の娘、サオリも捕らわれていた。
もちろん、彼女も救出し、サイボーグたちは急遽立花博士を守るチームとサオリを守るチームに分かれ、脱出することにした。
 
脱出と同時に基地を爆破する作戦だったのだが、そうした予定外のアクシデントのため、時間が足りなくなってしまった。
やむを得ず、基地の爆破は後回しにし、ひたすら逃げることにしたのだった。
当然追っ手はくる。
 
あらかじめ003が、基地の兵力を確認していた。
その基地には、ごく小さな部隊が一つ配備されていただけだった。
十分逃げ切れるはず、と彼女が請け合い、脱出作戦は実行された。
 
サオリを守ったのは、009、004、003だった。
いきおい、009はサオリをぴったりとガードして先行することになる。
これもいつものことだ。
 
コトはきわめて順調に進み、ほどなく009とサオリは危険地域を離脱することができた。
彼女を安全と思われるトコロにひとまず避難させ、ドルフィンにその場所を報告すると、009は003と004の援護に戻った。
 
ここまでは実にすみやかだった。
駆けつける009の姿を、004も視界の端に確かめていたのだ。
それが、油断といえば油断につながった。
 
いきなり、004の目の前にバズーガを構えた敵が現れた。
マシンガンの照準を合わせるのとほぼ同時に、004は小型ミサイルが迫る気配を察知した。
左後方に着弾する、と直感した。サーチを続けている003の近くだ。
 
一瞬の判断だった。
009がくる。
当然彼は加速して003を助けるだろう。
その思いが、004に目の前の敵を優先させた。
 
敵が倒れるのと同時に、ミサイルが着弾した。
すさまじい爆風に逆らいながらちらっと振り返った004は、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる003を見た。
009の姿はない。
004は一気に混乱した。
 
しかも、倒れた彼女の傍らには、敵が複数いた。
彼女を狙って駆けつけたのではなく、たまたまそこで、爆風をやり過ごすために伏せていただけだったらしい。
彼らは、いきなり飛び込んできた幸運に相当戸惑いながらも、するべきことは理解し、しかも正しく実行した。
003の頭に銃口をつきつけられ、004は当然動けなくなった。
 
…009!
 
それでも、加速装置があれば。
004は素早く009に通信を送った…が、反応がない。
 
敵はとことん幸運だった。
もちろん、彼らがそれなりに訓練され、優秀な戦闘員だったことは言うまでもない。
彼らは彼らの能力にできうる限りの速度で意識を失った003を小型機に運び込み、基地へと飛び立ってしまったのだった。
 
十数秒…いや、数秒間の出来事だった。
 
呆然と立ちつくす004に、008からの通信が入った。
009が重傷を負った。
ひとまず帰還せよ、と。
 
 
 
ドルフィンに戻ると、泥だらけになったサオリが、顔を覆って泣いていた。
009は、彼女のせいで傷を負ったのだという。
どういうことかよくわからない。
 
003がさらわれた、という報告に動揺しながらも、仲間たちは009の負傷について004に説明した。
 
サオリを岩陰に潜ませ、戦場に向かって疾走していた009は、ほどなく彼女の悲鳴に振り返り、駆け戻った…のだという。
もちろん、003にミサイルが迫っていたのにも彼は気付いていたはずだから、その辺りにやはり何か混乱があったのかもしれない。
とにかく、彼は怯えるサオリの元へ、咄嗟にごく無造作に戻ろうとして、こともあろうに地雷にひっかかった…というのだった。
 
「加速装置は?」
「間に合わなかった…っていうんだから、相当動揺していたんだろうね…」
 
008が溜息まじりに言った。
 
で、サオリが悲鳴をあげたのは…その。
 
「コレのせい、アルね…」
 
006がだらーんと長いモノを持ち上げてみせた。
蛇だ。
かなり大きい。
 
「毒はなかったアルけど、たしかにコレ、びっくりするアルよね〜」
「どうでもいいけど、なんでそんなもん持ってきたんだ、006?」
 
007が唇をゆがめた。
 
「まさか…」
「蛇料理は精がつくアルのよ」
「やっぱり食うのかっ!」
 
それはそれとして。
 
信じられない。
009が地雷をそこまで無造作に踏む、ということ自体かなり信じられないが、加速装置で離脱するタイミングも逃すとは。
それを言うなら、003がちょうど敵のいるトコロに吹き飛ばされた…というのも信じられないわけだが。
 
「悪いときには悪いことが重なるものアルねえ…」
 
でもたくさん悪いことがあるときは、いいこともちょびっとあるものヨ、くよくよしないネ、と006は嬉しそうにその大蛇を引きずって退場した。
 
「とにかく、問題は003の救出だ…彼女の外傷は、君の見たところどうだった、004?」
「彼女なりに避けたんだろう。見た目には無傷だった」
「…急いだ方がいいな。援軍が来る前に」
「ああ」
 
基地は、ごく小さいものだった。
そもそも、これまでの攻撃でほとんどその機能は失われている。
既に本部からも見捨てらているだろう。
しかし、003を手に入れた、という報告を受ければ、援軍が大挙してくる可能性もある。
すみやかに叩かなければならない。
 
「といって…奴らを刺激するのもマズイよね…一応、人質とられてる…って形なわけだから」
「俺が行こう」
 
004は仲間たちを見回した。
 
「一人で行く。奴らに気付かれないように近づき、003を助け出してくる」
 
もともと…俺がドジを踏んだわけだからな。
そうつぶやくように付け加えた004に、全員が戸惑いながらもうなずこうとしたとき。
 
「…待ってくれ、004」
「009!?」
 
壁にもたれかかり、体を支える009に、悲鳴のような声を上げて、サオリが駆け寄った。
それをやんわりと制して、009は004を見た。
 
「彼女がさらわれたのは、僕の責任だ…僕が行く」
「その体でか?」
「応急処置はすんでる。加速装置も一応使える」
 
仲間たちは迷うように顔を見合わせた。
004が沈黙を破った。
 
「オマエは休んでいろ、009。万一援軍がきたときには、オマエの力が必要になる」
「処置はすんでるんだ。中途半端な休息をしても無意味だ」
「今のオマエよりは、俺の方がマシだろう…万一救出に失敗すると、面倒なことになる」
「…004!」
 
002と008が009を両側から押さえた。
 
「ここは004の言う通りだと思うよ、009…俺たちは待機していよう」
「そうそう、たまにはオッさんにいい思いさせてやろうぜ?」
 
002の軽口に、004は微かに眉を寄せたが、何も言わなかった。
その後ろ姿を見送りながら、荒々しく002と008の腕を振り払う009を、サオリは不安そうに見つめていた。
 
 
 
結局、004によって基地は破壊され、003も無事に救出された。
彼女に外傷はとくになかったが、とにかく休息を…とギルモアは指示した。
 
ミッション終了。
あとは、立花父娘を日本へ送り届けるだけだった。
 
「009…ありがとう。あなたは、私の命の恩人です。ずっと…忘れません」
 
頭を下げるサオリに、009は少しあわてた。
 
「いや…早く忘れた方がいいよ、こんなこと。それに、君を助けたのは僕だけじゃないんだし…」
 
サオリは寂しそうに微笑んだ。
なんとなく気まずい沈黙が流れる。
 
「本当によかったわ。003が無事で……」
 
ふと彼女はつぶやいた。
 
「…うん」
「あんなに自分を呪ったことはなかった…私がバカだったせいで、あなたに大けがをさせて、彼女まで…」
「君のせいじゃないよ、サオリ」
 
いいえ、とサオリは首を振った。
 
「003に万一のことがあったらと思うと…たまらなかったの。001と004に申し訳なくて…」
「…え?」
 
009は首をかしげた。
サオリは涙ぐんでいた。
「私、小さいときに母を亡くして…父は優しかったけれど、やっぱり寂しかった。もし私のせいで、001と004がそんな思いを」
「ちょ…ちょっと待って!」
 
サオリはけげんそうに009をのぞいた。
009はじーっと額に手を当てて何か考え込んでいる。
 
「あの…もしかして、きみ…003が001のお母さんだと思っていた?」
「違う…んですか?」
「…うん」
「まあ…!ごめんなさい、私ったら…001と004がとても似ているような気がしたから…」
 
ええと?
それって…つまり。
 
なおもぐるぐる考え始めた009に、サオリは恥ずかしそうに言った。
 
「それじゃ…お二人は、まだお子さんがいらしたわけでは…なかったんですね…ああ、よかった、失礼なことを言ってしまうところだったわ…!」
「お二人は…まだ…って」
「ごめんなさい、009…私が…その、勘違いしてしまったこと、誰にも言わないでいただけますか?」
「う、うん…でも…」
「本当に素敵なお二人ですね…ああしていたわり合っていらっしゃるところも、なんだか、映画を見ているようで…004が003を腕に抱いて帰ってきたとき、私…少しドキドキしてしまったんです…不謹慎だって、わかっていたけれど」
「……」
「ペルセウスとアンドロメダみたいだったわ…」
 
わずかに頬を染めてうっとりつぶやいたサオリは、009の表情に我に返った。
 
「ご…ごめんなさい!いやだ…こんなこと言うつもりじゃなかったのに…恥ずかしいわ、忘れてください」
「……」
「私、どうかしてるんです…いろんなことが…信じられないようなことがこんなに続いて…ロマンティックな気分になりすぎてたんだわ…ごめんなさい、009…あなたたちがどれだけ大変な思いで戦っているのか…私、少しもわかっていない…」
 
真っ赤になって弁明するサオリのコトバを、しかし、009はほとんど聞いていなかった。
 
ペルセウスとアンドロメダ…って。
どこかで聞いたことがある。
何だっけ。
 
やがて。
サオリは決意したように顔を上げ、009の胸に身を寄せた。
009はぼんやりその両肩を抱き止めた。
 
 
 
なんなんだ、アイツは。
 
泣き疲れて眠ってしまった003の髪をゆっくり撫でながら、004は、ともすれば噴き出しそうになる感情を懸命に押さえつけていた。
 
もちろん、アイツから望んだわけじゃないんだろう。
だが、何度同じコトを繰り返すつもりだ?
まして、今は……
 
 
何の気なしに部屋を出たとたん、廊下に立ちすくんでいる003に気づいた004は、その視線の先に立つひと組の男女を認め、息を呑んだ。
009とサオリが抱き合っていた。
 
004は咄嗟に003の口を塞ぎ、抱えるようにしてそのまま自室に引き込んだ。
彼女が微かに震えているのに気づき、思わず強く抱き寄せる。
安心しろ、と無言で合図すると、驚いて見開かれた青い目に、みるみる涙が盛り上がった。
 
「…ごめん…なさい…」
 
003は震える声でつぶやき、004の胸にきつく顔を押し当て、嗚咽を隠した。
 
彼女が、こんなふうに泣くのを、004は見たことがなかった。
いや、誰も見たことがないだろう。
たぶん、009も。
そう思いながら、004は泣きじゃくる003をしっかりと抱きしめていた。
 
彼女が009に惹かれていることは、傍目にもよくわかる。
そして、それを懸命に隠そうとしていることも。
彼と愛しあうのは、許されないことだ…と彼女は堅く信じている。
 
許されるのか、許されないのか。
それは004にもわからなかった。
しかし…
許されていようがいまいが、叶わない思いに苦しむ気持ちに変わりはない。
 
普段は何気なくしていても、こういうときに003は思い知らされるのだろう。
自分がただの女であることを許されていない、サイボーグ戦士だということを。
そして、どんなに愛そうが、009もサイボーグ戦士…仲間でしかありえないということを。
 
彼を一途に愛することのできる女性を目の当たりにするたび、003は密かに苦しむ。
嫉妬…ではない。
嫉妬する理由はない。
009が彼女たちとの愛を成就することもまた、できないのだから。
 
嫉妬ではないのだから、仮に009が誰よりも003を愛し、それを彼女に示しても、彼女の苦しみを取り去ることはできない。
彼女の苦しみは、彼を一途に愛することを許されない、自分の宿命にある。
彼に近づく女性たちは、彼女にその宿命を生々しく思い出させてしまう。
 
彼女を苦しめたくないのなら。
本当に009がそう思っているのなら、彼は自分に女性を近づけてはいけない。
愛していようがいまいが。
 
どうしてアイツには、それがわからない…?
 
烈しく泣いて疲れ切った003を、004は静かにベッドに横たえ、毛布をかけてやった。
なだめるように優しく髪をなで続けていると、彼女の呼吸は少しずつ穏やかになっていった。
 
 
どれだけそうしていただろうか。
控えめなノックの音がした。
 
「004、起きているかい…?ちょっと話が…あるんだけど」
 
009の声だった。
004はゆっくり立ち上がった。
 
 
 
おおっぴらに開かれたドアの向こうで、ベッドに横たわる003を見つけた瞬間、009の目の奥に鋭い光が宿った。
それを冷ややかに見つめ返しながら、004は彼を押しやるようにして廊下に出ると、ドアを後ろ手にきっちり閉めた。
 
「どう…いうことだ…?」
 
怒りを帯びた低い声に、004は沈黙で答えた。
 
「なぜ…彼女が、君の…」
「オマエに説明する必要はない」
「ある…!」
「なぜだ?」
 
009は怒りを押し殺しながら言った。
 
「彼女に触れるな、004」
「……」
「いいか、これは009として…リーダーとしての命令だ。003に、触れるな!」
「リーダーの命令…か?恐れ入ったな」
「…っ!」
 
間髪をいれず鋭くひらめいた拳を、鋼鉄の掌が受け止めた。
鈍い音が廊下に響く。
 
「僕に殺されたい、のか?」
「オマエの指図は受けない」
「彼女は、仲間だ…!きみが…僕たちが触れることは、許されない」
「許されない?」
「そうだ。それが、全てを捨てて、僕たちとともに戦っている彼女に対して、僕たちが守るべき最低限のルールだ」
「とんでもない理屈だな。009、オマエは003が女じゃないと言いたいのか?サイボーグとして戦う以上、女としての幸せを求めてはいけないと…」
「彼女にその幸せを与える男は、僕たちではない、と言っているんだ。僕たちは彼女を幸せにできない。その資格もない」
「彼女が、それを望んでも…か?」
「…!」
 
唇をかみしめる009に、004は薄く笑った。
 
「…まあいい。つまらん誤解をされても迷惑だから言っておく。彼女は、俺のところに泣きにきた。今は泣き疲れて眠っている。残念だが、今日のところはそれだけだ」
「なん…だって?」
「なぜ泣いていたか…知りたければ自分で彼女から聞き出すんだな。俺の口から言うわけにはいかん」
 
呆然と立ちつくす009を廊下に残し、004は部屋に入ると、003をそっと抱き上げた。
 
「コイツの部屋に寝かせてくる。心配ならついてこい」
 
ゆっくり歩き出したが、足音は追ってこない。
004は我知らず重い溜息をついていた。
 
こいつらは、馬鹿だ。
いずれ劣らぬ大馬鹿者だ。
 
 
 
立花父娘と別れを告げてからしばらくは、平穏な日々が続いた。
 
が、004に関して言えば、平穏どころではない毎日だった。
あれ以来、009に四六時中「監視」されているのだった。
 
恐れ入ったぜ。
 
004は内心舌を巻いていた。
とにかく、003と二人きりになれない。
 
幸い、004としては実際のところ、彼女と二人きりになる必要性をそれほど感じているわけではない。
それでも、一つ屋根の下で共同生活をしている以上、日に何度かはそうなる機会というものがある。
そんなとき…ふと気付くと、必ず009がその場にいるのだった。
時には、どこから現れたんだコイツ、と度肝を抜かれることもある。
 
もちろん、009の能力を考えれば、やってできないことではない。
そして、彼はそれをやり通す決心をしているようなのだった。
それこそ、自分の能力の限りを尽くして。
 
あのとき、感情の赴くまま、つい挑発的な言動に出てしまったことを、004は密かに後悔していた。
さすがに鬱陶しいことこの上ない。
幸い、003は気付いていないようだったが……
 
それでも、ただ監視されているうちは、まだ良かったのだ。
 
ある日、003に洗濯物を干すのを手伝ってほしい、と声をかけられた004は、さりげなく辺りに気を配りながら庭に出ていった。
珍しく009の姿はない。
009に手伝ってもらえばいいじゃないか、とからかうフリで探りを入れると、003は少々頬を染めつつ答えた。
 
「ジョーならさっき、博士に頼まれて、図書館へ行ったわ…彼にしては珍しく、なんだか渋っていたみたいだったけど…」
 
…なるほど。
 
彼が渋る本当の理由を知っているのはもちろん、004だけなのだった。
 
003は、仲間たちのシーツを物干し綱に干そうと四苦八苦しているところだった。
乞われるまま、あれこれと手を貸すうちに、004は久しぶりに解放的な気分になっていた。
 
空は高く、青く澄んでいる。
彼女が洗い上げたシーツはあくまで白く、それを背景に、亜麻色の髪が光と戯れるさまは、申し分なく美しかった。
 
「アルベルト…洗濯ばさみをとってくれる?」
 
振り返った003に笑顔を返し、つと手を伸ばしたときだった。
熱い痛みが004の指先を灼いた。
 
「…っ!」
 
洗濯ばさみは指から弾かれるように飛び、小さく弧を描くと、003の白い手の中にすぽっと飛び込んだ。
 
「アルベルト…?」
きょとん、と首をかしげる003に、004は笑って見せた。
 
「いや…なんでもない。手がすべっちまった」
 
革手袋の指先が熱をもち、わずかに変形している。
間違いない。
加速した009が触れた跡だった。
 
「彼女に、触れるな!」
 
あの低い声が聞こえたような気がして、004は背筋がすうっと冷たくなるのを感じた。
が、恐怖を感じたのは、一瞬だった。
 
…冗談じゃねえぞ。
 
戦士としての本能が、恐怖を闘志に染め変えていくのを、004は実感した。
 
オマエがその気なら、やってやろうじゃねえか、009!
 
たぶん。
009にひきずられ、自分もどこかおかしくなっていたに違いない。
ずっと後になってから、004はそのときのことを振り返り、そう思った。
 
そして、それを皮切りに、004と009の間で、壮絶な小競り合いが始まったのだった。
もちろん、それを知る者は誰もいなかった。
 
004は他の仲間に怪しまれないよう気を配りながら、003と二人になる機会を巧妙に作り、彼女に触れようと試み続けた。
009はそれをことごとく阻止した。
が、あまりにも鮮やかかつ完璧すぎる009の手際は、004の闘志を更に燃え上がらせるのだった。
 
それは、サイボーグ戦士としての意地と誇りをかけた争いだった。
少なくとも、004にとってはそうだったのだ。
 
事件は、そんな中で唐突に起こった。
背後に見え隠れするBGの影を追い続けたサイボーグ戦士たちは、やがて、黒幕の正体がBG幹部であることと、その本拠地とを突き止め、即刻掃討作戦を開始したのだった。
 
 
 
ミッションの原案を組むのは、いつも008だった。
004は密かに008の部屋を訪ね、009との間で起きていることについて打ち明けた。
もちろん、戦闘時にまでこの意地の張り合いを続ける気は毛頭なかったし、009とてそれは同じはずなのだが、万に一つの危険であっても、予測できるなら、あらかじめ排除するべきだった。
それが戦闘時の心構えというもので。
 
「…そういうわけだ。すまないが、俺と003が組まないようにしてもらえないか?」
「うう〜ん…」
 
008は頭を抱えた。
 
「弱ったな…今回のミッションでは、君と003のコンビで動いてもらうつもりだったんだけど」
「なんだと〜?」
 
008は何か口の中でつぶやきながら、何度もキーボードをたたき直し、モニターをじっと見つめ…
…やがて、大きく溜息をついた。
 
「…無理だよ、004。君と003を離すわけにはいかないし、009をそこに組み込むことも不可能だ。009は先発隊として行ってもらう。003は後方で全体をサーチし、指示を出す。君は、彼女のガードだ。今回のミッションでは、先発隊の機動力が何より重要なんだよ」
「それは、困る」
「困るのはわかるけど…009に話して、休戦ってことにしたらどうだい?コトは戦闘なんだし、そんなくだらない…いや、その、つまり私情を絡めるわけにはいかないだろう?」
「アイツにとって、コレは私情じゃない。だからやっかいなんだ」
「弱ったな〜」
 
とはいえ、008にも予想できた。
話しても、多分無駄だ。
もし、この話をすれば、009はごく穏やかに「わかった」と言うだろうし、成り行きによっては004と堅く握手を交わしつつ「僕が悪かった、すまない」と謝ったりもするかもしれない。もちろん、心から。
 
しかし。
いざ戦闘が始まれば…どうなるか。
 
戦闘時の009の心身については、誰も…おそらく009自身も、必ずこうなる、と読み切ることはできないのだった。
今までの経験で痛感している。
もっとも、それが彼らにとって不利になるような結果に終わったことはほとんどないのだが…
 
結局、008は「009を信じるしかないんじゃないか?」と結論した。
それ以外の結論はない、ということを004も認めざるを得なかった。
 
下手に話をしない方がいいだろう、とも008は言った。
コトが003に関係してくると、009はかなり神経質になる。
どんなに気をつけて話しても、思わぬことが逆鱗にふれたりするし…
 
「でも、もっと怖いのは、彼を落ち込ませてしまうことなんだよね〜」
 
たしかにその危険もないとはいえない。
とにかく、危険は回避する。できうるかぎり。
これが、戦闘時の心構えなのだった。
 
 
 
思えば、のっけからマズかった。
 
ミッション開始、解散…の直前、003が全員に「危ない!」と鋭く警告した。
ミサイル攻撃だった。
 
サイボーグたちは反射的に飛び退き、それぞれ難を逃れた。
009が叫ぶ。
 
「みんな、大丈夫か!?」
 
ああ、となにげなく答えた004は、009の射るような視線に一瞬固まった。
咄嗟に003を抱きかかえ、身を伏せて庇っていたのだった。
 
しかし。
もちろん、そこにはなんら下心のようなものはない。
あるわけないではないか。ふざけるな。
ひるみそうになった自分を叱りつけ、004は009の視線を真っ向から受け止めた。
 
オマエにそんな目でにらまれる筋合いはないっ!
 
004はわざとゆっくり003から身を離した。
003が004を見上げ、小さく「ありがとう」と囁く。
その可憐な声も当然009には届いているはず。
 
悔しかったらさっさと片づけて戻ってきやがれ。
 
…と、いう気持ちをたっぷり乗せて、004は009をにらみ返した。
同時に、009の姿が消える。
加速装置だ。
 
「へっ、張り切ってるじゃねえかよ、坊や!」
 
002がにやっと笑うと、続いて飛び立った。
 
「…大丈夫か、003?」
「ええ。進みましょう…ここは狙われやすいわ」
「そうだな」
 
 
作戦は順調に進んだ。
注意深く全体をサーチしながら、003は仲間たちに何度も細かく指示を出し直した。
 
「少し、予定より速く侵攻しているわ…大丈夫かしら?」
「…っと…!」
 
004はぽん、と003の頭をはたくようにして伏せさせ、マシンガンを放った。
 
「004、後ろに3人!」
「了解!」
 
瞬く間に兵士をなぎ倒し、003を助け起こそうとしたときだった。
チリ、と指先に痛みが走った…気がした。
 
…なんだ?
 
「003、敵は?」
「もういないわ」
 
それじゃ、今のは…なんだ?
流れ弾…じゃないだろう。
…まさか。
 
「004、移動しましょう…今ので場所がわかってしまったわ」
「あ、ああ」
 
何の気なしに003の肩を抱こうとした手を、004はふと宙におよがせた。
 
…まさか。
 
「003、先発隊の連中はどうした?」
「問題なしよ。速すぎるぐらいの速度で進んでいるわ」
「…そうか」
 
それはそうだ。
そんなはずない。
 
が、004は003との間にわずかに距離を置いた。
 
そんなはずはないのだ。
絶対にあり得ない。100パーセント不可能だ。
ただし。
 
それは、相手が009でなければ…の話だ。
 
 
10
 
その気配は、つかず離れず、004を脅かした。
003は気付いていない。
 
間違いない。
 
004はそう思った。
自分が003に不用意に近づいたとき、ソレは起きる。
彼女に触れようとした指が、一瞬灼かれるような熱を受ける。
研究所にいたときと同じだ。
 
これでは、集中できない。
ついに004は先発隊にいた008に連絡を取り、009がそこにいるかどうか確かめた。
すると、008はとまどいながらも、009はいない、と答えたのだった。
 
「004、009がいない…って、どういうこと?はぐれてしまったの?」
「…いや」
 
どう説明したらいいかわからない。
 
「オマエは気付かなかったのか?」
「加速中の009は捕捉できないわ。でも、何も異常は起きていないはずよ」
「そう、か…いや、すまん…それなら…オマエの『目』が正しいはずだ」
 
004は、なおも不安そうな003にうなずいてみせ、008に通信を送った。
 
「003が確認した。009は加速して更に前方にいるようだ。そのまま進んでくれ…すまなかった」
 
しかたない。
はじめから、コレはアイツと俺との問題なのだ。
仲間を巻き込むわけにはいかない。
まして、戦闘中に。
 
だったら…どうする?
 
004は決意した。
とにかく、009を前線に戻さなければならない。
そのためには…ここで自分が003に触れることは絶対にない、と009に納得させなければ。
しかし、加速中の009に通信は届かない。
 
だったら、態度で見せるしかないだろう。
どこまで見せれば彼が納得するのかは見当もつかなかったが。
 
003に触れず、近づかず、視界にいれることもせず、なおかつ彼女を守る。
そのためには……
 
「004!?」
 
いきなりマシンガンを乱射しはじめた004に、003は驚いて振り返った。
 
「気にするな、003。前線のサーチを続けろ!この辺の敵は、俺が全滅させてくる!」
「そんな…無茶よ、あなた一人では!作戦どおり、近づいた敵だけを倒しましょう」
「それでは移動が多くなりすぎる。それに、このままだと、俺たちに敵が近づくのを探る余裕など、すぐなくなるかもしれない。オマエが前線のスピードについていくには、もっと集中できないとマズイ」
「ダメ、004…待って…!」
 
003は混乱した。
しかし、004が、さしたる理由もなく作戦を勝手に変更するはずはない。
彼は、何か大きな脅威が迫っているのを感じているのだ…と、彼女は直感した。
 
それが正しいかどうかはわからない。
自分の目と耳はその脅威をとらえていない。
しかし……
 
004を信じよう、と003は気持ちを切り替えた。
自分たちはいつもそうして戦ってきたのだ。
極限の中で、互いをかばい合い、どんな状況でも勇気を胸に燃やして。
そうすることで、自分たちはいつも能力を超え、予想も常識も越えた力を発揮してきた。
 
003は深呼吸し、前線へと全意識を集中した。
自らの運命は全て、004…死神の腕に任せて。
 
 
11
 
008の作戦はいつも正しい。
そして、戦場における003の現状把握も、たいてい正しい。
もちろんだ。
それが008であり、003なのだから。
それはわかっている。
 
が、004はそのことを改めてカラダに教えられた思いだった。
 
文字通り全身から炎を噴き上げ、戦いまくっているのに、敵はあとからあとから現れる。
ついに004はミサイルもマシンガンも使い果たし、左手のナイフだけを頼りに、猛進してくる敵をなぎ払い続けていた。
時折、気遣うように入っていた003からの通信も、にべなくはねつけ、「前線に集中しろ」とだけ返信するうちに、間遠になっていった。
 
無謀だったのはわかっている。
しかし、今更やめるわけにはいかない。
003は、004に全幅の信頼をおいて、全ての意識を前線だけに向け続けているのだ。
 
自分が倒れたら、元々戦闘力が低く、しかも自らの危険を察知することも封じられた003は、ただの無力な少女として敵の只中に単身放り出されることになる。
 
喉の奥から振り絞るような呻きとともに、004は左手を高く振り上げ、走り続けた。
全身に、どれだけの傷を負っているのか、わからない。
痛みは既に感じなくなっていた。
 
しかし、足が思うように動かない…気がする。
限界が近い…のかもしれない。
息をつくたび、目の前がかすむようにぼやけた。
 
倒れるな。
倒れるわけにはいかない。
まだだ…!
 
そのとき。
地の底から這い上がってきたような振動と爆発音が辺りを揺るがした。
 
「004、終わったわ!…009よ!!」
 
003が歓喜の声を上げる。
 
…そうか。
戻っていたんだな、009。
 
終わった、と思ったわけではない。
それは、ほんのわずかな、しかし致命的な気のゆるみだった。
次の瞬間、004は大きく目を見開き、叫んだ。
ミサイルが風を切る不気味な音が急速に近づくのに気付いたのだった。
 
「003!伏せろ!!」
 
コトバにならない叫びが喉からほとばしった。
懸命に走ろうとするが、足が言うことを聞かない。
間に合わない。
 
ハッと振り返った003の姿が、灼熱の炎と爆風にかき消される。
 
004は絶叫した。
 
 
12
 
「やあ、004…気がついたかい?」
 
首から下が動かない。
004はぼんやりと漆黒の肌の友人を見上げた。
 
ということは。
俺は生き延びたのか。
生き延びて…しまったのか。
 
彼女を…守りきれず。
またしても、俺は。
 
夢であってくれ…という希望は、008の黒く澄んだ目を見つめるうち、急速に消えていった。
 
「まったく…無茶したもんだよ、君といい、009といい…君たちにかかったら、俺が徹夜して練り上げた作戦なんて、何の意味もないんだな」
 
穏やかに愚痴ってみせる。彼女のことには触れない。
彼らしいやり方だと思う。
しかし。
 
それなら、自分が問わなければならない。
問わなければ、この心優しい友人に口火を切らせることになる。
004は軽く息を吸い、静かに尋ねた。
 
「003…は?」
「覚悟しとけよ…ぶりぶり怒ってる」
「……」
「もう君のことは金輪際信用しないってさ…ああ、誤解するなよ。彼女は、自分が吹き飛ばされたコトについて言ってるんじゃないぜ…君が、そんな傷を負って一人で戦ったことについて憤慨してるんだ」
「…吹き…飛ばされた…?」
 
008はうなずいた。
 
「最後の最後にミサイルが近くに着弾して、吹き飛ばされた…と言ってた。幸い、怪我はなかったけどね」
「……」
 
近くに着弾…?
 
違う!
直撃だったはずだ。
 
そうでなければ、俺が見たアレは何だ?
炎に包まれ、爆風にかき消された、あの003は……
 
「まあ、とにかくよかった。後は009だけど…君がギルモア博士の予測どおり目覚めたんだから…大丈夫かな」
「009が…?アイツも、やられたのか?」
「ああ。彼が加速装置を持っているのはいいことなのか悪いことなのか、時々見当がつかなくなるよ…誰にも止められないんだから、始末に負えない」
 
…おかしい。
 
あのとき、003は明らかに歓喜していなかったか。
「終わったわ…!」と言ったはずだ。
 
「どんな具合なんだ…?ヤツは?」
「めちゃくちゃさ…どう戦ったら、あんなになるんだか…博士がこぼしてたよ。加速装置は使用限界をとうに振り切ってるし、人工皮膚の半分を交換しなくちゃいけないし、人工骨だってぼろぼろだ。俺たちの前に姿を現したときは、もう立っているのがやっと…というか、すぐ倒れちゃったんだけどね」
 
まあ、言いたいことはいろいろあるよ、君にも009にも。
参謀としての俺のメンツも踏みつけにされたわけだしね。
治ったら覚悟しとけよ…と008は笑った。
 
 
13
 
一体、何があったの、ジョー…?
 
あなたはきっと何も教えてくれないんでしょうけど。
でも、どうして…こんな。
 
何度目になるかわからない溜息を落としたとき。
009の瞼が、微かに動いた。
 
「…ジョー…?」
「……」
 
少しまぶしそうに瞬きし、003を見て…009は微笑んだ。
 
「私が、わかる…?」
 
小さくうなずく009に、003は思わずきゅっと唇を噛んだ。
涙があふれそうになる。
 
「……」
「…何?」
 
009はまだ、声が出せないようだった。
003は彼の唇の動きをじっと見つめ、うなずいた。
 
「ええ。見て…わかるでしょう?私は、大丈夫」
「……」
「そうよ…アルベルトが、ずっと守っていてくれたわ」
 
再び微笑む009の額を、003は堅く絞ったタオルでそっと拭った。
気持ちよさそうに目を閉じた彼の頬を軽くつつく。
 
「でも…ねえ、ジョー…不思議なのよ」
「……」
「最後に…無事に脱出したあなたを見つけて、それからすぐだったわ。私の近くに、ミサイルが落ちたの」
「……」
「ううん、近く…じゃなかった。ホントに、私のところに落ちたの。もうダメだと思った…でも、私…結局ただ吹き飛ばされただけで、怪我ひとつしなかったわ」
「……」
「それからね…私が最後に見たあなたは、私の目を信じる限り…こんな怪我なんかしていなかったと思うんだけど」
「……」
「ねえ、これって…どういう…ことかしら」
「……」
「ジョー…寝ちゃったの?」
「……」
「あなたは、不思議だと…思わない?」
 
そう。
あなたの側にいると、不思議なことによく合うわ。
もう慣れたと思ったけれど。
でも……
 
「いいこと、ジョー?目を覚ましたら、ただじゃすまないわよ…覚悟してね。あなたも…アルベルトも」
「……」
 
寝たふりしたって…許さないんだから。
 
 
14
 
悪かったよ、とつぶやくような声に、004は思わず目を上げ、009を見つめた。
 
「僕が、悪かった。許してくれ、004」
「何を」
「何…って。だから」
 
しかし、それ以上何も言えず、009は立ちつくしていた。
004はわざとらしく大きな溜息をつき、新聞を広げ直した。
 
「俺は明日、帰るからな」
「…え」
「安心しろ」
「…アルベルト」
 
やってられるか、と吐き捨てるようなコトバに、009はうつむいた。
 
「オマエのせいで怪我はする、フランソワーズに小言はくらう、ピュンマに厭味は言われる…」
「…ごめん」
「謝るな。悪いなんてこれっぽっちも思っちゃいないくせに」
「そんなことは…!」
「それじゃ、いいのか?」
「え…何が?」
 
004はじろり、と009をにらみつけた。
 
「たとえばだ…俺が明日、彼女を連れて行く…と言ったら、どうする?」
「……」
 
沈黙はほんの一瞬だった。
009は微笑した。
 
「彼女が、それを望むなら」
 
…ぬかせ。
 
とことん不愉快なヤツだ、失せろ、とつぶやき、004は新聞に目を落とした。
ややあって、009がぽつん、と尋ねた。
 
「アルベルト」
「まだいたのか?」
「あの…ペルセウスって…どんな人だっけ?」
「なんだ、イキナリ」
「どこかで聞いたことがあると思うんだけど」
「ギリシア神話だな」
「…神話」
 
ぼんやり考え込んでいる009を、004はちらっと見やった。
 
「003が詳しいだろう。聞いてみろ」
「え、いや…それは」
「だったら、本でも借りてこい」
「そうか。本があったよね」
「……」
 
009はうんうんとうなずきながら、どこかいそいそと出ていった。
 
わけのわからないヤツだ。
だが。
そうか。なるほど。
 
「彼女が、それを望むなら」
 
そういうことか。
一応、一歩踏み出した…と言えるのか。
 
一歩…だが。
意外に、大きな一歩…か?
 
 
いずれにしろ、気が遠くなるような話だ。
勝手にいつまでもやってやがれ。
 
…いつまでも。
 
そう、もちろんいつまでも…だ。