「フランソワーズ…まだ迷ってるのか?」
「重さも感触も香りも網目の感じも、同じ…だと思うの」
「ふーん?」
「ジョーは、どっちがいいと思う?」
「えっ…そんなの、わからないよ。君にわからないものが、僕にわかるはずないだろう?」
「だから、聞いてるのよ。わからないときは、あなたに決めてもらうのが一番間違いないわ」
「へ?」
「この間だってそうだったじゃない?最後に残ったどっちのコードを切るか…私もピュンマもどうしても判断できなくて…」
「いきなり何言い出すんだよ?アレとコレとでは全然話が……!」
「同じよ。勘であなたにかなう人なんて、そうそういないと思うの」
「フランソワーズ、それ、褒めてるのかな?」
「もちろんよ」
「でもね。もしそうだとしても、それは…ああいう時だけ、のことだよ。きっと僕の『能力』のひとつなんだ」
「そんなことないわ…!」
「そうさ。だいたい、昔から、こういうことで僕の判断が当たったためしってないんだぜ。絶対、マズイ方を選んじゃうんだよな…張々湖にもよく言われるよ、どうしてわざわざそれを選んできたアルか〜!ってね……ジェットほどじゃないかもしれないけどさ」
「…そんなこと」
「君だって知ってるくせに。君、僕に夕飯の買い物を任せたことなんかないじゃないか」
「それは…!でも、私が言いたいのは、そういうことじゃなくて」
「だからさ。僕の勘は…そういうものがあるとしたらだけど…つまり戦うためのもの、なんだよ」
「ジョー……ごめんなさい…私…そんな、つもりじゃ」
「あ。僕こそ、そういうつもりじゃなくて……フランソワーズ?」
「……」
「ごめん。大丈夫だよ……ねえ、ごめんね」
「……」
「…フランソワーズ…」
「……」
「じゃ…さ。両方買おうよ!」
「…え?」
「君が迷うんだもの、どっちもおいしいにきまってる」
「…ジョー」
「それで決まりだ!ええと、次は……何だっけ?調味料…?」
「……」
すたすた行ってしまうあなたの背中を、あっけにとられてしばらく見ていた。
…ほら。
私の言ったとおりじゃない。
わからないときは、あなたに決めてもらうのが一番間違いないの。
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