また今年も1月が来て、君の誕生日が来る。
君はプレゼントをもらえないからって腹を立てたりするような女の子じゃないけど、やっぱり気を遣うよ。
どうせ贈るなら、喜んでもらいたいし。
でも、君が、モノにこだわる人じゃないことはわかってる。
君は、モノにこめられた心の優しさをちゃんと感じ取ってくれるから。
だから君は、007手製の、なんだかわからない人形みたいなモノを、とても大事そうに、部屋に飾っているよね。
まあ、007はそれでいいんだよな、子供だし。
僕はちょっとそういうわけにはいかない。
君がいいって言っても、僕の方が気がすまない。
といっても、どんなものを贈っても、同じように嬉しそうな顔をしてくれる君だから、それはそれでいいんだけど、ちょっと物足りないような気もする。
だってさ、007の怪しい手作り人形と、僕の真珠のブローチが一緒の扱いって、ひどくないか?
いや、だから君はモノにこだわる人じゃなくて、そこがいいところなんだけどね。
とにかく、女の子っていうのはよくわからない。
あれはいつの誕生日だったっけ。
僕がプレゼントにカードを添えたのは、ほんの気まぐれ…というか、ほとんど偶然みたいなモノだった。
可愛い万年筆を見つけて、それを包んでもらったら、お店の人がオマケにって、押し花つきのカードをくれたんだ。
そんなモノ、僕が持っていてもしかたないから、それも彼女にあげることにした。
何を書いたらいいのかわからなかったから「誕生日おめでとう」だけ書いて。
それが、ウケた。
ちょっと複雑な気がするぐらいウケたんだ。
複雑…ってのは、つまり。
こんな紙切れ一枚でこんなに喜んでくれるなら、今までの苦労…っていうか努力はなんだったんだろうって、やっぱりそう思ったのさ。
だから、それから、君へのプレゼントには必ずカードを添えることにしている。
カードだけ…ってのも変だし、けちだと思われたくもないから、プレゼント選びの苦労は変わらないけど。
それどころか、苦労は増えてしまった。
だって、カードに何を書くか考えないといけなくなったから。
誕生日おめでとう、って書けばいいんだけど、まさか毎年それだけってわけにはいかないだろう。
君は文句を言ったりしないだろうし、同じように喜んでくれるはずだけどね。
一応、僕だって考えるのさ。
君は本当に心がきれいで、人を疑うことを知らなくて、優しくて。
だから……あんまり言いたくはないけど、悪いヤツにつけこまれやすかったりもするんだよな。
誕生日おめでとう、って一言書いてあるカードだけで、君って人は幸せになってしまう。妙なヤツがそれに気付いて、君をだましたりするかもしれないだろう?
だから、僕としては、君にさりげなく注意しておきたい。
誕生日おめでとう、なんて、誰にでも書けるんだ。
でも、ちゃんと君を大事に思っている人間なら、もう少し何か他のことも書こうとするはずさ。
僕のようにね。
君は、僕のカードをまあ、基準みたいなモノにしてくれればいいんじゃないかと思うんだ。
そう思うと、あまりツマラナイことは書けない。
そんなわけで、僕は今日も図書館にこもっている。
平凡な言葉じゃダメだし、気障なのはイヤだし、説教臭いのもウンザリするだろ?
難しいよ、本当に。
でも、ちょっと楽しみでもあるんだ。
だって、努力しただけの甲斐はあるからね。
人気者の君のトコロには、サイボーグの仲間達からはもちろん、いろんな人からたくさんのバースデーカードが届く。
でも、君が一番嬉しそうに目を輝かせてくれるのは、いつも僕のカードを開いたときだ。
誰にも言ったことはないけど、これはうぬぼれじゃない。勘違いでもない。
今年はどうしようかな。
中国の昔の詩の言葉なんてどうだろう。
そうしたら、プレゼントもオリエンタルな感じにしてみようか。
まったく。
めんどうなもんさ、女の子って。
|