「008」
「ん?…なんだい、イワン?」
「君に、言っておきたいことがある」
「……」
「聞いてくれるかい?」
「……」
「さすが慎重だね、008。ジョーならすぐ『いいよ』って言うところだ」
「まあ、ジョーならね」
「聞きたくない?」
「そうだな」
「……」
「イワン。君がこうして僕の意志を確認するってことは、それを僕が聞かなくてもどうにかなるってことだ」
「…ウム」
「この世には、聞かない方がいいってことが多い。僕の経験ではね」
「素直じゃないね、君。ホントは聞きたいんだろう?」
「想像にまかせるよ」
「想像する必要なんかない。僕にはわかるから。君は、聞きたがってる」
「君がそう言うならそうなんだろう。でも、聞かなくていい」
「…強情だな。後悔するよ」
「予言かい、それ?」
「聞いておきたまえよ。例えば僕が『誕生日おめでとう、ピュンマ!』って、赤ん坊らしく無邪気に言いたいだけなんだとしたら?」
「なるほど…それは後悔するかもな」
「…だろ?めったにないことなのにさ」
「つまり、素直じゃないのは君の方じゃないか」
「そうかな」
「そうさ」
「…フランソワーズの時は素直に言えたんだけど」
「なんだよ、それ」
「なんでもいいさ…で、聞きたいかい、008?」
「……」
「008?」
「やっぱりやめておこう。ここまで引っ張るってことはたぶんそういう無邪気な話じゃないんだろう。」
「…ほんとにさすがだよ、君は」
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