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  2   ピュンマさま001と遊ぶ
 
 
「驚いたな。君の超能力っていうのは要するになんでもできるってことだ」
 
半ば呆れているピュンマに、イワンはごく生真面目に言った。
 
「なんでも…ってほどのことじゃないよ。それに、持続時間にも限りがある。そのときは頼むよ、ピュンマ」
「おいおい。そのときって……やめてくれよな。いくら僕だって、こんなトコロからただの赤ん坊を無事に連れ帰ることなんてできないぜ?」
「ふふ、そうだね」
「…ったく!」
 
どうやらからかわれたらしい、と気づいたときには、イワンは上機嫌で泳ぎ始めていた。
一体どうやっているのか見当もつかないが、呼吸に不自由はしていないらしい。
 
「実は、試してみるのは初めてなんだよ……理論的には可能だとわかっていたし、シュミレーションもやってみたしね。でもさ、いざ実験、って事になると、みんな慎重というか、心配性というか……」
「おい。……実験だって?!それがわかっていたら、僕だって承知なんかしなかったぞ、イワン!」
「ふふ」
「笑ってごまかすなよ……冗談じゃない」
「海って、結構冷たいんだね。この深さなら当たり前だけど、実際に感じてみると新鮮な気がするよ」
「……ってことは、君、今さ、水に触れてる状態なんだ?」
「ウン」
「わけがわからないな。……えら呼吸でもしてるのかい?」
「そういうこと、かな。君のメカニズムを参考にさせてもらってる」
「……なるほど」
「やっぱり…この体で自由に泳ぐのは無理だなあ……でも、地上にいるよりはマシかもしれない」
「ああ。そういうふうに見えるよ……そうだ、イワン。ちょっと今日のオカズを採ってみないか?」
「…オカズ?」
「うん。あっちの浅い砂地に、貝が結構あるのさ。魚や海老は無理でも、アレならなんとかなるんじゃないかな」
「フーン?」
「やってみるかい?」
「……ウン」
 
よし、とピュンマはうなずき、ひょい、とイワンを抱えようとした……が、イワンは首を振った。
 
「どうせなら、1人で泳いでみるよ」
「…そうか」
「貝って、アサリとか…ハマグリってとこかな」
「うん、そうだと思う、…君は食べられないだろうけど」
「いや。オミソシルにしてもらえば味わうことはできる」
「オミソシル?」
「スープの一種だね……日本の料理だ」
「ふーん」
「フランソワーズ、びっくりするかな」
「するとも……それに、喜ぶと思うぜ?」
「…そうかな」
「もちろんさ」
 
うけあうと、イワンは心なしか勇んで泳ぎ始めた……ようにも見え、ピュンマは思わず微笑した。
コレは、お母さんにおみやげをもっていこうとはりきる息子、というよりは……
 
「…オトコ、だなぁ」
「当たり前じゃないか」
 
即答され、ピュンマは思わずぎょっとした。
イワンは澄まして続けた。
 
「自分の力で手に入れたモノを愛する女性に贈りたいっていうのは、原始の時代からのオトコの本能みたいなものだね、きっと」
「あ、ああ」
「がんばってみるよ……ああ、時間切れになったらよろしく頼む」
「だから、それは無理だって!」
 


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