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介護のお仕事 街頭インタビュー 百合男子?

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平ゼロ
 
1 
 
少女はヘレン、と名乗った。
同級生なのかしら、それとも後輩…?とフランソワーズはひそかに首を傾げる。
 
「あ、あの…急に、すみません…あの…私……」
「ジョーのこと…かしら?」
「…え!」
 
はっと顔を上げる仕草も染まった頬も、さっきの少女と同じだった。
彼女はたしか……シンシア、という名前だったような。
 
「ジョーが好きなのは、アーモンドトリュフよ。あまり甘くしない方がいいの」
「…あ、甘いものは…苦手だ…って聞いたのですが」
「うふふ、そうね。でも、アーモンドトリュフだけは例外、なんですって」
「そ…うなんですか…ありがとうございました!」
「どういたしまして…がんばってね」
「…はい!」
 
ぺこり、とお辞儀をすると、ヘレンはバラ色に染まった頬を両手で押さえ、嬉しそうに微笑した。
さっきの少女…シンシアもそんな顔をしていた、と思う。
 
「5人目、か……」
 
さすがになんとなく気が咎める。
嘘はついていない。
でも、この分だと、ジョーは確実にアーモンドトリュフ責めになってしまうだろう。
 
すがるような少女たちの瞳を見ると「知らないわ」なんて冷たい返事は到底できない…という気がするし。「あなたで5人目よ」と言ってしまうのもマズイと思う。
 
とはいえ、ジョーは、アーモンドトリュフならいくつでも食べられるよ!と豪語していたのだから、案外大丈夫かもしれない。
例えば、他にも好きなチョコレートがあるのなら、適当に振り分けて教えてあげられるのに…と、フランソワーズは息をついた。
とにかく、変な所が頑固な弟なのだ。
 
フランソワーズは図書館に入り、料理の本が並ぶコーナーで立ち止まった。
チョコレート作りの本はすっかりなくなっているはず…と覚悟していたのだが、まだ数冊が残っている。
 
どうしようかなあ…と、ページをぱらぱらと繰りながら、フランソワーズは考え込んだ。
自分までアーモンドトリュフを作ってしまったら、さすがにジョーが気の毒だという気がする。でも、それ以外の菓子を、基本的に甘いモノを苦手とする彼が口にしたがるとも思えない。
 
あれこれ考えてから、フランソワーズはドイツ菓子の本を選び、カウンターへ持って行った。
発想を変えればいいんだわ、とふと思いついたのだった。
 
 
 
「ザッハトルテ…だと?」
 
なんとなく眉間にしわを寄せるアルベルトに、フランソワーズは借りてきた本を示した。
 
「新境地を開拓してみようと思うの。叔父さまならきっと細かい所を教えてくださると思って」
「俺は菓子など作らんぞ」
「…え。そう…なの?」
「ヒルダに教わるか?」
「そうしたいけれど…でも悪いわ。ヒルダさん、忙しいし……」
「言っておくが、俺だって忙しい」
「わかってます。でも、今みたいな時間もあるでしょう?ちょっと合間に…でいいんですもの」
「イキナリどうしたんだ?…ジョーの好みが変わったのか?」
「いいえ。でも、さすがに6人目は必要ないと思って…」
「6人目?…なんだ、それは」
「ねえ、叔父さま…もし作ったら試食してくださる?ザッハトルテ」
「お断りだ」
「まあ…!」
「お前の手に負える菓子じゃないからな…出来損ないを食わされるのはゴメン被る」
「え…そんなに難しそうなレシピには見えないわ」
 
大きく華やかな写真が目立つ料理本を熱心にめくるフランソワーズに、アルベルトは不快そうに言った。
 
「そんな本に載っていて、お前にも作れるようなモノなら、ソイツはインチキ、まがい物だ…ザッハトルテとは言わん」
「……」
 
ジョーの頑固はこっちの系統かもしれないわ。
フランソワーズはこっそりそう思う。
 
「そんな怪しい新境地に迫る前に、ピュンマの好みに合わせてみたらどうだ?」
「兄さんは、甘いものが本当に苦手なんだもの…だからといって、お砂糖を入れないチョコレートって、モノスゴイものでしょう?」
「それは…そうだが」
「それに兄さん、いつもたくさん…いただいてくるし」
「うむ」
「ジョーも、この頃はそうみたいだし。だから、これからは私が作りたいモノを作ればいい…ってことなのよ」
「変なヤツだなあ…?」
「叔父さま…?」
「バレンタインデーっていうのは、女が好きな男にチョコレートを渡す…というモノなんじゃないのか?」
「…ええ」
「お前、そういう男はいないのか?」
「兄さんと、ジョーと、叔父さま」
「いや、そうじゃなくてだな…」
「だって他には誰も」
「いや、だからそうじゃないだろう?」
 
…そうじゃない。
 
アルベルトの言うことがわからないわけではなかった。
でも…とフランソワーズは思う。
 
他には、本当に誰もいないんですもの。
 
 
 
ドアを開けると、甘い匂いに包まれた。
そうか、明日はバレンタインデーなんだ…と思い出す。
…が。
 
「…なんか、いつもと違うような気がするんだけど…この、匂い」
 
首を傾げるジョーに、ピュンマは笑った。
 
「へえ。なかなか鋭いじゃないか…やっぱりフランソワーズはオマエを見くびってるんだなあ」
「…どういうこと、兄さん?」
「どうやら、モノが変わるらしいよ…ヒルダさんからの情報なんだけどね」
「モノが…?どうして?……え、兄さん、まさか?!」
「うん?」
 
ピュンマは瞬きした。
穏和な…といえば聞こえがいいが、要するにいつもぼーっとしている弟が、こんなに険しい表情を見せるのは珍しい。
 
「まさか、姉さん…アイツにやるツモリじゃないよね?」
「アイツって…誰だ?」
「兄さんの、なんか、同僚とか言ってる…ロボットオタクの変態バラ野郎!」
「…もしかして、エッカーマンのこと言ってるのかオマエ?…むちゃくちゃな言いようだな」
「僕は反対だ。あんなヤツ、姉さんに近づけるもんか…!」
「うーん。…まあ、僕も積極的に応援する気はないけれど…でも、本人がいいって言うんなら…しょうがないだろう?」
「姉さんに限って…もしそうなら、きっとアイツに誘惑されてるんだ」
「誘惑…ねえ」
 
たしかに、アレにはちょっと驚いた。
ピュンマの同僚、カール・エッカーマンは、どーもフランソワーズに気があるらしく、どうやって調べたのか、先日、彼女の誕生日にバラの大花束を送りつけてきたのだった。
 
「でも、変態ってのは言い過ぎだな…たしかに変なヤツだけど。そういえばアイツ、開発中の新型ロボットに、Fー003って名前つけてるんだよなあ…」
「F…って。フランソワーズのFだよね、きっと」
「うーん。だとしても、003の意味がイマイチわからない。ま、何もかもシスコン兄弟の僕らの思い過ごしってこともあるかもしれないしね。そもそもフランソワーズをモデルにしてるのだって、要するに、いい年頃の妹がいる研究員が僕しかいなかった…ってだけのことだしなあ。身内でもなけりゃ、むやみに写真とか使うわけにはいかないから…いろいろウルサイんだ、こういうことってさ」
「大体、ソレが一番おかしい。姉さんをモデルにした女性型ロボット…なんて、兄さん、よく開発する気に…」
「ははは、モデルといっても気分の問題だからさ、単に…SFじゃあるまいし、人間そっくりのロボットなんてまだまだ全然…」
「だから!…だったら、姉さんの写真なんて、そもそも必要ないはずだろ?」
「…うーん。まあ…そういえばそうなんだけれど」
「オカシイよ、兄さんの職場は…!なのに、姉さんときたら、卒業したら兄さんの所でロボット研究もいいかなあ、なんてノンキに…」
「まあそう言うなって…所詮アイツも、オマエの言い方を借りればロボットオタクなのかもしれないしさ」
「ぜーったい違う!姉さんは、バレリーナになるんだ!」
「オマエが決めることじゃないだろう?」
 
ピュンマは息をついた。
弟の言いたいことは何となくわかる。
自分としても、フランソワーズの将来を思うとき、ロボット研究者よりはバレリーナの方が似合っているような気がついしてしまうのだった。
 
「それにしても…どうしていつものをやめたんだろうな、アイツ…ジョー、オマエ、ヘマしたんじゃないのか?」
「ヘマ…って」
「バレたんだろう、きっと」
「…え?」
 
ピュンマはうんうん、と腕組みした。
 
「あのときと同じだよ…大学生になってすぐの年だった。僕にチョコレートをくれる女の子が結構いる…ってわかった途端、じゃあ兄さんにはもういいわね…ってさ」
「……」
「お?…僕にそんな女の子はいない!…って言わないんだな、オマエ…正直だなあ」
「…僕は…別に」
「そう、か…なるほど…オマエもオトナになった…ってことかあ…じゃ、あとはフランソワーズだけ、だ」
「だから!相手が問題なんだ!」
「…だから。ソレは僕たちが口を挟むことじゃないんだよ、ジョー」
 
諭すような静かな兄の言葉に、ジョーはぐっと言葉を呑み込み、悔しそうに唇をゆがめた。
 
 
 
夕食後。
フランソワーズがキッチンに入り、オーブンから何やらケーキのようなモノを取り出すのを、兄弟は見るともなしに見ていた。
 
「…できたわ!うまくいってるといいのだけど…」
「ソレ、明日用?」
 
のんびり尋ねるピュンマに、フランソワーズは笑顔でうなずいた。
 
「ザッハ・トルテよ…これからコーティングするの」
「ずいぶん大きいなあ…」
「ふふ、兄さんに全部食べろなんて言わないから安心して…ジョーもね。でも、一切れずつはお願い」
「…一切れずつって。…あとは、どうするの?」
「イロイロ…よ。せっかく作ったんだもの」
「……」
 
じーっと口を噤んでいるジョーをちらっと横目で見てから、ピュンマは何気なく言った。
 
「ああ、ソレでなんか…ラッピングの用意までしているのか。結構大変だな」
「そうねえ…でも、楽しいものよ。女の子の特権ね」
「…姉さん」
 
思いつめたような目で不意に口を開いた弟を、フランソワーズは怪訝そうに見返した。
その、あくまで無心な視線に脱力しそうになりながらも、全身の勇気を振り絞って、ジョーは姉に尋ねた。
 
「…いつもの、は…作らなかったの?」
「…あ」
 
姉は、花がほころぶような笑顔になり、優しく言うのだった。
 
「作らなかったわ…でも、心配はいらないのよ、ジョー」
「……」
 
やっぱりな…と、兄は弟をこっそりつっつくのだった。
 
 
 
フランソワーズは兄弟がじーっと見ているのも気にしない様子で、仕上げのコーティングを施し、ラッピングの準備を手際よく始めた。
 
「あっちの箱はたぶん、アルベルト叔父さんだね。同じのを張々湖飯店に…ふたつ」
「どうしてふたつなんだ?」
「グレートさんの分もあるから、きっと」
「…なるほど」
 
兄と弟はぼそぼそ囁きあった。
 
「それから、大学のギルモア先生にひとつ…リボンの色が同じのがあとふたつあるけど…」
「うん。たぶんアルテミスさんとリナさんの分だ」
「…誰、それ」
「大学の友達」
「兄さん、詳しいんだね」
「それぐらいは当然さ」
「ええと…それで箱はおしまいだ…でも、それだと八つに分けたケーキがあと二つ…姉さんの分がなくなっちゃうよ?」
「いや。まずケーキを4つに分けるだろ?で、そのうちのひとつを更に三つに分けて、ソレが僕たちの分だ。僕もオマエも甘いモノがいまいち苦手だって…わかってるからな」
「そう…っか……よかった。アイツの分はないよね」
「ああ、たぶん」
 
よかった…と、自分も思っていることに気づき、ピュンマは心の中で苦笑した。
兄としてはよかった、とばかり思ってはいられないのかもしれないが…
…しかし。
 
「できたわ…!見かけは悪くないけれど…お砂糖入れ忘れたりしてないわよね」
「なんなら、味見する?これから」
 
フランソワーズは兄の言葉に笑顔で首を振った。
 
「いいえ…もし失敗していても、気の置けない人たちばかりですもの…笑って許してもらえるわ」
「え…でも、アルベルト叔父さんは…」
 
気難しい叔父の仏頂面をつい思い浮かべ、ぽそっとつぶやくジョーに、フランソワーズはまた笑った。
 
「いいの、叔父さまには持っていかないんだから。この間、さんざんイジワル言われちゃったし」
「え!?」
「…どういうこと?!」
 
飛び上がるように驚く兄弟に怪訝そうな視線を向け、フランソワーズは説明した。
が、もちろんソレは、兄弟が求める説明とは、大きくかけはなれていたのだった。
 
「叔父さまったら、私に作れるような程度のモノなら、ホンモノのザッハトルテとは言わない、まがいものだ…なんて言うんだもの」
「……」
「……」
「あ。大丈夫よ、安心して。叔父さまには、ちゃーんとベルギーの老舗チョコレート店のを用意しているから。文句は言わせないわよ」
 
…いや、僕たちが心配なのはそういうことじゃなくて。
 
 
 
バカだなあ…と、我ながら思うのだが、どうにもならない。
翌日、ピュンマはほとんど気もそぞろで1日を過ごした。
 
職場の女性たちからかなりの数のチョコレートをもらった。
もしかしたら、中にはいわゆる「本命」もあったのかもしれない。
受け取る、というのもそれなりに気を遣うものだったりするのだが…自分がどこか上の空でいるのを、どうすることもできなかった。
 
つい、視線が彼の同僚を…カール・エッカーマンを追いかけてしまう。
 
カールもまた、かなりの数のチョコレートを手にしているようだった。
よーく見ると、たしかに、彼はなかなか端正な顔立ちの好青年なのだった。
実に優秀な男で、仕事ができるのはもちろん、親切で礼儀正しく、身なりや立ち居振る舞いにもどことなく品がある。
 
ジョーほどではない、とは思うものの、自分もやはりどこかで、どうやら可愛い妹に気のあるらしいこの男を「ロボットオタクの変態バラ野郎」とか思いこもうとしていたのかもしれないなあ…と、ピュンマはしみじみ反省した。
 
そんなピュンマに気を止めることもなく、カール・エッカーマンはいつもと同じように仕事をこなし、いつもと同じ時間に帰宅の途についた。
まさかその後を尾行するわけにはいかないし…と思いつつも、そうしたくなるような衝動がわき上がってくる。
ピュンマは何度も深呼吸し、地下鉄の向こう側のホームにいる彼から微妙に視線をずらした。
…すると。
 
「…ジョー?!」
 
げ、と思ったとき、向こう側のホームに電車が滑り込んだ。
ほどなく、電車が走り去ると、ホームにはカール・エッカーマンの姿も、ジョーの姿もなかった。
 
躊躇したのは、ほんの数秒だけだった。
ピュンマは深く息を吸い込むと、向こう側のホームへと階段を駆け上がった。
 
 
 
…間に合った。
 
物陰から飛びだそうとしたジョーの首根っこをつかまえ、驚いて隙が出たところを一発ぶんなぐる。
 
「…な、何するんだよ…!兄さん!」
「し…っ!…帰るぞ、ジョー」
「…だって!アイツ!」
「アタマを冷やせ…!何もかも余計なお世話だ!フランソワーズに恥をかかせるツモリか?」
「……」
 
低く厳しい兄の声に、ジョーははっとうつむき、唇を噛んだ。
 
「帰ろう…フランソワーズが心配している…今、メールが入ったよ…オマエにも、じゃないか?」
「…あ」
「ほら、…な?…とにかく、帰るんだ、ジョー」
「……」
 
建物の外に出ると、ちらちらと雪が舞っている。
ほう…っと大きく息をつき、ジョーは消え入りそうな声で呻いた。
 
「アイツ…だったら、なんだって…姉さんに」
「さあ、な…たまたまあのとき、よしっ、バラだぜ…!って気分だったんじゃないのか?」
「…なんだよ、ソレ…」
「でも、まあよかったんじゃないかな…あまり欠点のない男だと思っていたけど…女を見る目はイマイチらしい…ってのがわかったし」
「…うん」
 
ジョーは兄の言葉に深々とうなずいた。
カール・エッカーマンと寄り添うようにして幸せそうに談笑していた若い女性。
たしかに美人の部類に入るかもしれなかったが……
 
「…姉さんの方が、ずーーっとキレイだった」
 
 
 
時間を微妙にずらして帰宅した兄弟は、覚悟していたほどフランソワーズに叱られずにすんだ。
今日は特別な日だから、遅くなっても仕方ないわね…ということだったらしい。
 
それはそれで申し訳ない気がして、二人はやや小さくなりつつ、少し小さめのザッハトルテを味わうのだった。
 
「…どう、かしら」
「うん…おいしい」
「おいしいよ。僕、これならいくらでも食べられるな」
「ふふ。無理しなくていいのよ、ジョー…兄さんもね…でも、よかった。失敗はしていないみたい」
「…あの、姉さん」
 
思い詰めたように顔を上げるジョーの表情に、ピュンマは、マズイ!と直感した。
テーブルの下で足を踏んづけたが、ジョーは全く動じない。
ひた、と姉の目を見つめながら尋ねる。
 
「姉さんはエッカーマンさんに、コレ…あげるんじゃなかったの?」
「…え?」
 
フランソワーズは一瞬首を傾げ…大きく目を見開くと、叫んだ。
 
「何言ってるのっ?!」
「…だって。姉さんは、アイツに…」
「どうして私が!…あんなロボットオタクの変態バラ…」
「ストップ!フランソワーズ!」
 
ピュンマが慌てて立ち上がった。
可憐な妹の口から「変態バラ野郎」という罵声が放たれるのは、ちょっと耐え難いものがある。
フランソワーズも、はっと口を噤んだ。
 
「あ。ごめんなさい…私ったら…兄さんのお友達のことを…」
「え?…いや、別に友達じゃないけど」
 
もごもごとごまかし、弟をこっそりにらみつける。
ジョーもわずかに肩をすくめ、それきり何も言わなかった。
 
 
 
だから、結局、問題の最後の一切れがどこへ行ったのかは、兄弟にはわからずじまいだった。
 
もしかしたら、作り方についてアドバイスをしてくれたという、ヒルダさんに持っていったのかな…と考えたピュンマは、後になって、アルベルトにそれとなく尋ねてみた…のだが。
 
「さあな。そんな話はしらん」
「…そう、ですよね」
「気になるか?」
「……まあ」
 
アルベルトはやれやれ、と息をついた。
 
「心配の方向がズレてるぞ、オマエたち。問題は、どんな男にアイツがひっかけられるか、じゃなく、どんな男ならアイツをひっかけることができるのか、だろうが」
「…はい?」
 
瞬きした。
叔父の言葉はいつも率直にして明瞭なのだが。
今のはちょっとわかりにくかった…とピュンマは思う。
 
そんな甥にまた溜息が出そうになるのを抑え、アルベルトは独り言のようにつぶやいた。
 
「まあ、基準がコイツらだからな……簡単にはいかないということか」
 
それならそれでいいじゃないか、無理に男を見つけることなどない。
ずっとコイツらと、このままいればいい。
 
…などと自分も思っていることに気づき、アルベルトは心で苦笑するのだった。

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