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四が困る

真珠
 
「念入りだね」
ため息まじりの声に、フランソワーズは思わず微笑んで振り返った。
「ごめんなさい…でも、ミナはおしゃれにうるさいの。ちゃんとしていかないと怒られるわ」
「…十分ちゃんとしてると…思うけど」
 
10時に出かける、といってたのに。
車の支度をして、様子を見に行くと、フランソワーズはまだドレッサーの前でパフを使っている。
 
少し襟の開いたワンピース。初めて見る服だった。
髪はきっちり結い上げてあって。
目を引いたのは…耳からこぼれ落ちそうな、真珠のピアス。
これも、初めて見る。
 
ジョーの視線に気づき、フランソワーズは鏡越しに微笑んだ。
軽く耳に触れてみせる。
 
「アルベルトに、もらったのよ」
「…アルベルトに…?いつ?」
 
フランソワーズはちょっと宙を睨むようにした。
 
「…先月…パリで会ったときに」
「パリで…?」
「ええ…アルベルト、仕事でパリに来たって…訪ねてくれたの」
「…ふうん」
 
先月…って。
誕生日じゃ…なかったよな、まさか。
 
「アルベルトったら、イミテイションだから安物だ…なんて言うのよ…でも…素敵でしょう…?」
「うん…よく似合ってる…アルベルトが…珍しいな…そんな」
「ホントね…どうやって選んでくれたのかしら?」
 
笑ったらいけないって思うんだけど…想像するとおかしくて…
 
楽しそうにくすくす笑うフランソワーズの耳に、淡い光が揺れる。
 
「あ…ジョー、そのポーチ、とって…」
「…これかい?」
 
ベッドに置いてあったポーチを取る。
何気なく渡そうとして…ジョーはフランソワーズの両肩をつかんだ。
そっとかがみ込む。
 
「…ジョー?」
「口紅つける前に…いいだろ?」
 
返事を待たず、唇を重ねる。
そのまま烈しく求めながら、ジョーは静かに目を開いた。
 
…真珠の淡い光。
 
「…あ?…駄目、ジョー…!」
不意に焼け付くような感覚が首筋を走り、フランソワーズは怯えた声を上げた。
 
 
2 
 
「フランソワーズ…そのスカーフ、ヘンよ」
「…ミナ」
 
容赦のない言い方は昔から変わらない。
フランソワーズはこっそり肩をすくめた。
 
「…まあ、仕方ないか…うらやましいわね…島村さん、やっぱりあなたのこと大事にしてるんだ?」
 
思わず首筋に手をやり、真っ赤になったフランソワーズに、ミナは吹き出した。
 
「馬鹿ね…!外しちゃいなさいよ、スカーフ…!それじゃ隠し切れてないし、かえって目立つわよ」
「…ミナったら…!」
「見かけによらないわねぇ、彼も…」
「そんな…!ジョーは…ジョーとは、私、そんな…」
「こんな素敵な贈り物までもらっておいて?…これ、アンティークじゃない」
「…え?」
 
ミナはそっとフランソワーズの耳に触れた。
 
「いくらトップレーサーでお金持ちでも…そう簡単に手に入るモノじゃないわよ…こんなに綺麗な…」
「…ミナ…?」
 
不意に黙り込んだフランソワーズを困ったように見つめ、ミナは優しく彼女の首からスカーフを外した。
 
「…大丈夫…それほど目立たなくなってるから…機嫌を直してね、フランソワーズ…あなたがあんまり幸せそうで…綺麗になっていたから、ちょっとからかいたくなっちゃったの…ごめんなさい」
 
 
3 
 
少し…飲み過ぎたかもしれない。
寝室のベッドに腰を下ろし、そっと両頬を押えて、フランソワーズは小さく息をついた。
 
ピアスを外し、サイドテーブルに置く。
スタンドの光を受けて、柔らかく光る真珠。
ミナの目に狂いがあるとは思えない。
それに…見つめれば見つめるほど、その美しさがただならぬものに思えてくる。
 
「…アルベルト」
 
 
灰青色の瞳。
全てを見透かされているような気がした。
 
「お前は…どっちを信じるんだ?ジョーか?それとも…」
 
…わかってる。でも。
不安でたまらない。
 
先月。
日本に来てほしい、というジョーからの手紙を受け取った翌日、アルベルトが不意に訪ねてきた。
思わず身を硬くするフランソワーズに、彼は笑った。
 
心配するな、事件…なんて起きちゃいない。
 
思い切って手紙を見せた。
生真面目に何度も読み返した後、アルベルトは微笑んだ。
 
「行ってやれよ…とうとう限界がきたってわけだ…あいつも」
「…限界…?」
「わからないか?…たしかにわかりにくい書き方だが…カンベンしてやれ。これでも、あいつには精一杯なんだろう…」
 
これ以上…お前と離れていたくない…そういう手紙だ、これは。
 
優しく肩を叩かれ、涙がにじんだ。
 
「そんな…そんな意味じゃないかもしれないわ…!だって…ジョーは…!」
「他に好きな女がいる…ってか?知ってるのか?」
「…そう…いうわけじゃ…」
「あいつは、昔からお前を大事に思ってる…それはわかっているだろう?」
「…ええ…でも、それは…仲間だから…」
 
…仲間だから。
 
灰青色の瞳がじっと見つめている。
見透かされている。
フランソワーズは唇を噛んだ。
 
わかってる…私は逃げているだけ。
仲間だと…そう思っていれば、傷つかずにすむ。
あの人が誰を愛しても…私が003であることは変わらない。
あの人の003は私だけ。
だから…私は動けない。永遠に。
 
ジョーを取り巻く女性達の噂は、たえず耳に入っていた。
ついこの間も。
面白おかしく報じられるゴシップを信じているわけではない。
でも。
 
手紙を出しても、返事は来なかった。
彼の部屋の電話番号も教えられていない。
彼がギルモア研究所に居合わせていれば、話をすることもできたかもしれないが…
 
理由はわかっている。
彼も躊躇している。
 
うつむいているフランソワーズに、アルベルトは息をついた。
 
まあ…無理もない。だが。
 
「フランソワーズ」
「……」
「お前は…どっちを信じるんだ?ジョーか?それとも…『世間』か?」
 
だが…本当はそんなことが問題なんじゃない。
お前が信じなければならないのは…お前自身だ。
…違うか?
 
数日後。
フランソワーズは、来月日本に発つ、とアルベルトに連絡した。
仕事のついでだ、と言い訳しながら、彼は再びパリを訪れ、フランソワーズの手に小さな包みを握らせ、囁いた。
 
…よかったな。
 
 
 
よかったな…と言われるようなことだったのかどうかわからない。
手紙を出しておいたのに、ジョーは空港に来なかった。
彼がようやく現れたのはフランソワーズが研究所に着いて一週間後だった。
 
それから…やっととれた「休暇」だといって…ジョーはずっと研究所にとどまっている。
 
そっと首に触れてみる。
もう、痛みは感じない。薄くついていた口づけの跡も消えているはずだった。
 
「…フランソワーズ?」
 
飛び上がるように振り返ったフランソワーズに、ジョーは少したじろいだ。
 
「……ジョー」
「ごめん…驚いた?…その…ノックしても返事がなかったから」
「…そ…う…ごめんなさい…少し…酔ったみたい」
「…大丈夫?…連絡してくれれば、迎えに行ったのに…」
「ミナが送ってくれるって言ったから」
 
曖昧に微笑みながら、フランソワーズはまた何となくピアスに目を落とした。
 
「ミナが…ね、このピアス…アンティークだって…言ったの」
「アンティーク?」
「…もしかしたら…アルベルトの大事なものだったんじゃないかしら…私…気軽にもらってしまって…」
 
ジョーは黙ってフランソワーズの隣に腰を下ろした。
柔らかい光を放つ真珠を見つめ、やがて…静かに口を開いた。
 
「アルベルトが、君を困らせるようなことをするはずない…気にすることはないよ」
「でも…」
「彼はただ…君がそれをつけているところを見たかったんだ…きっと」
 
ジョーはそっとピアスをとり、ややぎこちない手つきで、それをフランソワーズの耳につけた。
 
「…え?」
 
そのまま頬に唇を寄せ、指を首筋に滑らせるジョーに、フランソワーズは思わず身を硬くした。
 
「どう…したの、ジョー…?お願い、離して…待って…!」
「待ったよ、フランソワーズ…僕は…ずっと待っていたんだ…もう…待てない…!」
 
 
 
なんて…綺麗なんだ。
 
ジョーはフランソワーズの胸からそっと身を起こした。
透き通る肌が、薄紅に染まっている。
 
君は僕のものだ。
もう誰にも、渡さない。
 
真珠を刺した耳に優しく囁く。
 
君が…欲しい。
君を…このまま全部感じたい。
 
華奢な体が少しずつ熱を帯び、抑えきれない声が唇から漏れ始める。
今、彼女が身につけているものは、あの真珠だけ。
彼女が切なく喘ぐたびに、淡い光が揺れる。
 
アルベルトが…君に贈った真珠。
こんなに…君の肌と一つになって…
 
…かまわない。
君の全ては…僕の…僕だけのものなんだから…!
 
 
 
…綺麗になったな。
 
アルベルトは内心舌を巻いていた。
 
メンテナンスのため、研究所を訪れた彼を、フランソワーズが迎えた。
予定より2日早い到着だった。
 
「博士は学会なの…ジョーも、お供してるから…二人とも、明日帰ってくるわ」
「そうか…仕事が早く終わったから来ちまったんだが…悪いことをしたかな」
「早く来てくれて、嬉しいわ…淋しかったから」
 
温かい笑顔も、優しい身のこなしも、何も変わらない。
変わらないが…綺麗になった、とアルベルトはしみじみ思った。
 
こういうものなのか…他人の話と聞いてはいたが。
 
「幸せそうだな」
 
フランソワーズは驚いたようにアルベルトを見つめ…僅かに頬を染めた。
 
 
夕食の後。
アルベルトは早々に寝室に入ってしまった。
逡巡しながらも、フランソワーズはその部屋をノックした。
 
今でなければ…言えないような気がする。
 
 
「…何だ?」
「あの…やっぱり、これ…もらえないわ」
 
フランソワーズが差し出した箱を眺め、一瞬考え…アルベルトは首をかしげた。
 
「気に入らなかったか…?」
「そんなこと…!でも…本当はとても大事なものだったんでしょう…?私がもらったりしてはいけないと思ったの」
 
大粒の真珠のピアス。
どれだけの値打ちのあるものなのかは知らない。
が、母から伝えられた形見だった。
 
いつか…お前の愛する人に…
 
母はそう言い遺して逝った。
そうやって代々伝えられてきた真珠だった。
 
「大事なもの…そうかもな。だが…だからお前に預けたんだ…俺にはもう…これを伝えられる者がいない」
「アルベルト」
「…だが、お前なら…お前達なら…未来に…」
 
アルベルトはふと微笑み、箱を開けると、ピアスを取り上げた。
亜麻色の髪をかき分け、耳たぶに触れる。
息が止まりそうな思いで、フランソワーズはひんやりした真珠の感触を味わっていた。
 
「彼はただ…君がそれをつけているところを見たかったんだ…きっと」
 
ジョーの言葉がよみがえる。
もしかしたら…
 
灰青色の瞳が優しく見つめている。
今にも…壊れそうな瞳。
 
あなたが…こんな目をするなんて……
 
ふわっと抱き寄せられた。
フランソワーズは目を閉じ、アルベルトの胸に頬を寄せた。
深い嘆息。
 
「…雨」
「ん?」
「雨が…降っているわ」
 
耳を澄ませたが…何も聞こえない。
アルベルトは後ろ手でスタンドの明かりを消した。
びくっと硬くなる体を更に強く抱き寄せる。
 
「…アル…ベルト…?」
 
 
彼が…何かつぶやいた。
私の耳でもとらえられないほど…微かに。
 
…あのひとを…呼んだの?
 
 
「…光ったんだ」
「え…?」
「お前の言うとおり…雨が降っているんだな…遠くで、稲妻が光った」
 
微かに揺れる青い瞳をじっと見下ろし、アルベルトは静かに唇を重ねた。
 
 
 
目覚めたら…一人だった。
 
思わず飛び起きた。
 
何度も見た悪夢。
もう夢と現実の区別もつかないほど。
 
…ヒルダ!
 
叫びかけたとき。
微かな…細い声が届いた。
少女の悲痛な声。
 
カッと頭に血が上った。
反射的に廊下へ飛び出し、隣の部屋のドアを破らんばかりの勢いで開け放つ。
 
ジョー…!彼女を離せ!!
罪なら、全て俺に…!!
 
目の前が一瞬真っ白になり…
意識が遠ざかった。
 
気づいたとき、アルベルトは、自分のベッドの上にいた。
大きく目を見開いたまま。
 
…夢…か。
 
深呼吸する。
…どこまでが…夢…だ?
 
耳を澄ますと…微かな細い声。
少女の…悲痛な……
 
そうか…
 
目を閉じ、深く息を吐く。
 
帰った…のか、ジョー…
 
 
 
夜が明けた。
カーテンを開け、窓を開けようとすると…
ジョーが、庭に出ていた。
 
昨夜の音もない雨は、意外に降ったらしい。
草も木もぐっしょり濡れ、雨上がりの日を浴びて輝いていた。
 
ぼんやり花壇を眺めていたジョーは、足音に振り返り、微笑んだ。
 
「やあ、アルベルト…おはよう」
「早かったんだな…今日帰ってくると聞いていたんだが」
「一応、日付は『今日』だったよ…君が早く着いたって聞いたから、急いだんだ」
「……博士がか?」
「うん」
 
ジョーは眩しそうに空を見上げ、また微笑んだ。
 
「よく降ったね…恵みの雨だ…フランソワーズが、喜ぶよ」
「まだ…起きてこないのか?」
「うん…珍しいね…疲れてるのかな」
 
疲れてるのかな…だと?
 
アルベルトは憮然とした表情で、少年の端正な横顔を見つめた。
…あれだけ責めぬいておいて。
 
明け方まで、フランソワーズの押し殺した喘ぎは続いた。
そのたび、あの…白い肌に痛々しいまでに刻まれた、無数の赤い跡が目の前によみがえり…
 
いや…それも夢だったのか…?
何もかも…俺の…
 
フェンスのつるバラに歩み寄り、雨を含み、ぐったりと垂れ下がっている花房を指で持ち上げ、アルベルトは軽くその露をはらった。
思いがけないほどたくさんの水滴が散る。
 
「ねえ…アルベルト…これ…もう駄目かな…?」
 
振り返ると、ジョーが庭の隅にかがみ、大きな花の茎を支えるようにしていた。
白い…見事な花だった。
幾重にも重なった透き通るような柔らかい花びらは、微かに紅を帯びている。
東洋の…花だ。たしか…名は…
 
「茎が…折れてるよね?」
「…そうだな」
 
アルベルトは、びっしりと露を含んでうつむく、その花を見つめた。
 
「…泣いてるみたいだ」
 
ジョーがつぶやき、愛おしむように花を折りとった。
両手で大事そうに捧げ持つ姿に、アルベルトは首をかしげた。
 
「飾るつもりか…?無理だろう」
「…いいんだ…僕の花だから」
 
 
 
ギルモアは、目覚めるとすぐ004のメンテナンスにとりかかった。
一日がかりの作業になる。
 
「ジョー…?」
二人きりになった途端、抱き寄せられていた。
「ジョー…ったら…待って…」
「待てないよ…!」
 
フランソワーズを自分の部屋に連れ込み、もどかしそうに抱きしめながら、ジョーは喘ぐように言った。
「…あれ…は?フラン…?」
甘く耳朶を噛む。
「あれ…?」
「真珠だよ…あの…ピアス…ねえ、つけてみて」
 
「…アルベルトに…返したわ」
「え…?」
 
ジョーの動きが止まった。
探るように見つめる茶色の瞳を、フランソワーズは静かに見返した。
 
「返した…って…どうして…?」
「…あれは…私のものではないから…」
「そんなこと…!!」
 
あれは…君のものだ。
君そのものだ。
君と溶け合い、君と一つになって…
 
そう言いかけて、ジョーは口を噤んだ。
指の震えを抑え、彼女のブラウスのボタンを外していく。
 
雪のような白い胸元に、赤い印が刻まれている。
 
僕が刻んだ印。
これも…これも。
 
でも…これは…?
 
ゆっくり顔を上げる。
青い瞳が涙を湛えていた。
 
「…泣いて…いるの…?」
「…ジョー」
「どう…して…?」
 
ばら色の唇が震え、ひらきかける。
ジョーは反射的に、その言葉を唇で塞ぎ、彼女をベッドに押し倒した。
 
いい…いいよ、言わなくて…!
僕は…大丈夫だから…だから、フランソワーズ…何も…言わないで!
 
「ここを出て…一緒に…暮らそう」
「……」
「お願いだ、フランソワーズ…ずっと…僕の傍に…」
 
フランソワーズは涙を流しながら、微かに頭を左右に振った。
 
「…フランソワーズ…!!」
「だめよ…ジョー、だって…私は……」
「アルベルトのものだから?…もう…遅い?」
「そんな…!」
 
フランソワーズは思い切りジョーの腕を振り払い、ベッドから飛び降りようとした。
…が。
 
「僕から…逃げられると思ってるの?」
「ジョー…離して」
「離してあげたい…君を泣かすくらいなら…でも…!」
 
小さな悲鳴を上げるフランソワーズを再び押し倒し、抱きすくめる。
もう…離せない。
こうなるって…わかっていた。
一度でも君に触れてしまったら…きっとこうなる。
だから、僕は…
 
誰の想いでも優しく受け止めてくれる君。
そんな君を…僕は愛した。
そんな君だったから…僕も愛してもらえた。
でも…でも、もう駄目なんだ。
 
君は…僕のものだ。
 
 
 
そうか…半年たってるのか。
 
アルベルトは心でつぶやいていた。
半年。
短い…か?
いや…
 
震えながら恋人からの手紙を見せた儚げな少女が、日本に渡ってわずか数週間で、匂うばかりに美しくなった。
それを思えば、半年は…果てしなく長い。
 
009はいつもと変わらない。
003も。
 
何が変わったのか…それを感じ取れるのは俺だけなのかもしれない。
 
彼女はもう怯えていない。
俺と二人きりになっても。
 
忘れたフリをしているわけではなく。
忘れてしまったわけでもない。
彼女は…前と同じように、優しく俺の傍らに立つ。
 
何も変わっていない。
だが。
 
もうお前にあの真珠は似合わないだろう。
確かめてみようとは思わない。
確かめるまでもない。
 
「それじゃ…二手に分かれよう…僕はジェットと行く…アルベルト、フランソワーズを…頼むよ」
「ああ…」
「気を付けて、二人とも」
「そっちもな」
 
頼む…と言われたら守るしかない。
お前の…真珠を。
 
ジョー、お前は…したたかな奴だよ。
そうとも、俺は…俺なら、命を捨てても彼女を守る。
何もかも、お前の思惑どおり…それでも。
 
「アルベルト…敵が…近づいてるわ」
「わかった。着弾距離に入ったら…教えてくれ」
 
俺には俺の愛し方がある。
それをお前に止めることはできないさ。生きている限り。
 
俺はそのために…生きるのだから。
 
 
更新日時:
2002.07.08 Mon.
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Last updated: 2013/8/15