「ピュンマ、お誕生日でしょう?ケーキを焼こうと思うんだけど…何がいい?」
「ああ、ありがとう、フランソワーズ…でも、僕はそういうのわからないからさ、君に任せるよ」
「あら…!でも、好みはあるでしょう?」
「うーん。君が作るお菓子はどんなものでもおいしいからね」
「まあ、ありがとう…そんなこと言ってくれるの、あなただけだよ」
「そうかなあ…?」
「それからね、ユカタも縫ってみたの…後で着てみてね」
「ユカタ…?ああ、日本の夏衣装だね…ありがとう、すごく楽しみだ」
「ほんと?よかった…喜んでもらえるか心配だったんだけど…」
「だって、君の手作りなんだろう?…それ以上のモノなんてないさ」
「ありがとう、ピュンマ…!嬉しいわ…あなただけなんですもの、そういう優しいことを言ってくれるのって…」
「…ええと、フランソワーズ?」
「なあに?」
「もしかして…ジョーと何かあった?」
「何か…って。どうして…?」
「いや……なんとなく」
「何もないわ…いつもと同じよ」
「いつもと…ね。そっか。そうかもな」
「あの、それで…ね、ピュンマ。もしかしたら、迷惑かもしれないんだけど…冬に、マフラーとミトンを編んだの」
「え…僕に?」
「あなたの国では、必要なかった…わよね」
「いや、そんなことはないよ…冬はそこそこ寒かったりするし…」
「ホント?ああ、よかった…!」
「ね。君…ホントにジョーと何かあったわけじゃ…ないんだよね?」
「いやぁね、何もないわ…あの人もいつもそう言ってるでしょう?」
「あ。いや、そういう意味じゃなくてさ…」
「今日、これから少し時間ある?一緒に街に来てほしいの。お誕生日の贈り物を買いたいんだけど…」
「え…そんな。ケーキに、ユカタに、マフラーに、ミトンだろう?もう贈り物は十分すぎるぐらいだよ」
「ネクタイなんか、いいんじゃないかと思ったの」
「いや、だからさ…フランソワーズ…」
「この前送ったネクタイ、気に入ってくれた?…学会のとき、使ってくれてたものね」
「あ、ああ。君のセンスは確かだからね…どこに行ってもアレは好評でさ…すごく助かってる」
「ありがとう…ホントに嬉しい…!」
「ええと、フランソワーズ。しつこいけどさ、君、ホントにジョーとは何も…」
「だから、何もないわ。いつもと同じよ」
「…そっか…いや、そうなんだろうなあ……」
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