「君には、この音がどう聞こえているんだろうな…」
「…む…?」
「波の音、さ…たぶん、僕に聞こえる音とは、ずいぶん違うんじゃないかと思う」
「そう、か」
「君の故郷に、海はなかっただろう?」
「ああ」
「それでも…初めて見るモノであっても、君には親しく感じられるのかな?君の故郷の川は、確実にここにつながっている。そんな感じでさ」
「…むぅ」
「…ごめん。言葉にはできないのかもな、そういうことって」
「……」
「時々思う。僕は誰よりもこの海を知っているつもりだ。この体でね…でも、僕が最先端の科学技術の力を借りて知りうる全てのことより、君が感じ取っている何かの方が、ずっと物事の本質に迫っているのかもしれない…って」
「……」
「でも…僕に、君のようなやり方はできないんだけど」
「……」
「……」
「聞いているぞ」
「あ。…ごめん、わかってるよ、ジェロニモ」
「……」
「君の言葉も、僕達のそれとは違う…でも、それがとても温かい」
「……」
「ごめん、僕ばかりしゃべりまくっちゃった…そろそろ戻ろうか」
「…うむ」
「今度、君と潜ってみたいな。違うモノが見えるような気がする」
「……」
「それとも、やっぱり…海は苦手かい?」
「008」
「うん?」
「誕生日、おめでとう」
「……」
「……」
「あ、ありがとう」
「……」
「ええと。君、本当に聞いてた?…僕の話」
「ああ」
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