「あー、久しぶりによく泳いだなぁ、すっきりした…君が付き合ってくれると気を遣わなくてすむのがいいよ。ありがとう」

「よかった。もっとも、僕でも、君にはついていくのがやっと…だけどね」

「ずいぶん遠くまできたな…そろそろ帰ろうか」

「え…もう？」

「もう…って？」

「せっかくこんな所まで来たんだからさ、もう少しゆっくりしていかないかい？」

「ふふ、どうしたんだよ、ジョー。ゆっくりしていくって…こんな、何もない所でかい？」

「何もないのがいいんだ…ほら。こうしてぷかぷか浮いてるだけでもさ」

「…おかしなヤツだなあ…」

 

「……」

「…なあ、ジョー？起きてるか？」

「うん」

「まだ浮いてるつもりか？」

「もう、少し」

「おいおい…どうしたんだよ、今日は……あ！」

「…ウン？」

「そうか。そういうこと…か」

「何だい、ピュンマ…どうかしたのか？」

「いや…道理で。何かオカシイと思ってたんだ。君が急に泳ぎに行こう、なんて言い出すから…」

「…ピュンマ？」

「ありがとう。でも、そろそろ準備もできるだろう。戻った方がいいぜ。遅くなりすぎたらみんなを待たせてしまうし」

「あの…ごめん、何の話してるんだろう、君？」

「……」

「……」

「えっと…ジョー？」

 

「ええっ！誕生日なのかい、君…！ご、ごめん…知らなかった」

「……」

「ごめん…その…」

「謝ることないさ…何でもないなら、その方が気楽だしね」

「だったら、早く帰らないと！パーティが始まっちゃうよ」

「…は？」

「張々湖大人もフランソワーズも、料理は熱いうちに！とか、冷たいうちに！とかウルサイだろ？わー、大変だ！」

「お、おい、待てよ、ジョー！」

「あ。僕が、君の誕生日のこと忘れて昼寝していたって、ナイショにしておいてくれると助かるんだけど…いいかな？」

「それは…いや、でも」

「マズイな…日が暮れる前に帰らないと…ピュンマ、先に行ってていいよ！君まで叱られたら悪い」

「ジョー、なんでそういうコトだと決めつけるんだよ？俺は、たぶん、誰もそんな準備なんかしてないと思…」

「いいから、早く！君、知らないから平気でいられるんだろうけど…フランソワーズって、こういうとき、すごくコワイんだぜ！」

「そ、そっか」

「うん」

「…わかった…わかったよ、ジョー。じゃ、先に行かせてもらう」

「ごめん、ピュンマ」

「謝らないでくれよ…楽しかったんだから」

「うん、ありがとう。でも…本当に楽しいのは、これからだよ」

「ああ。そうだな、きっと……君が、そう言うのなら」