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 13      花束
「ジョー、それ…どうしたんだい?」
「あ。…後で君に、と思ったんだけど…見つかっちゃったか」
「え?僕に?…ああ、誕生日だからか!」
「うん」
「そうか、ありがとう…それにしても、珍しい花だな…何だい、これ?」
 
 
…ってことで!
この続きを五段活用っ!
 14      新ゼロ
 
「ごめん、ちょっとわからないんだ…僕だけじゃなくて、フランソワーズも見たことがない花だって…」
「へえ、そうなのか。それじゃどうにもならないな…でも、キレイな花束だ」
「うん。親切な花屋さんだったよ」
「花屋?…ああ、それでオマエ、こっそりストレンジャーで出ていたのか」
「なんだ…!それもバレていたのかい?…しょうがないなあ…」
「こんな時なのに、気を遣わせて悪かったな…でも嬉しいよ、ありがとう」
「いや…まだお礼を言われたら困るんだけど…一応、この後の段取りってのがあって」
「そうなのかい?悪いな…それどころじゃないのに」
「もちろん、それどころじゃない、なりのことしかできないけど。悪いのはこっちの方だ…でも、みんな楽しみにしててさ、すごく張り切ってるんだ」
「…みんな?」
「うん」
「ふーん、みんな…ね、ふふ、そうか…」
「…なんだよ?」
「いや、なんでもない…なあ、ジョー…そこまで聞いてこう言うのは…とてもすまないんだが…それ、今、もらうわけにはいかないかい?」
「…え?」
「とんでもない無礼なことだとはわかってる…でも、君たちに甘えさせてほしいんだ」
「ピュンマ、まさか…」
「実は、君たちが攻め込んでいる間に、赤ん坊が生まれてね…あの村で。僕が立ち会った」
「……」
「あの若い母親に、これを譲ってはいけないだろうか」
「…ピュンマ」
「彼女は、生まれてこのかた…いや、これからだって、こんな花束をもらうどころか…見ることすらないだろう。だから」
「…わかったよ…やっぱりこうなったか…まったく、言い出したら、きかないんだからな…君は」
「ありがとう…!本当にすまない、ジョー」
「いや、君に見つかっちゃった僕が悪い。だから絶対に隠しておいてくれって、さんざん言われてたんだし…しかたない」
「…叱られるかな?」
「君は大丈夫さ…叱られるのはたぶん僕だけだ」
「ふふ…悪いけれど、そうとわかれば安心だ。優しい子だけど、あれで結構コワイところもあるからなぁ…オマエがその辺は一番よく知っているんだろうけれど」
「…誰の話、してるんだよ?」
「みんなの話、さ…モチロン」
 15      平ゼロ
 
「何って。…ひまわりだよ」
「それは見ればわかるさ。でも、ずいぶんカワイイからさ…切り花用の品種なんだろうな」
「切り花用の?」
「うん。いや、今、ムアンバの気候と土壌にあった農作物をいろいろ探していてね。花もモノによってはいけるんじゃないかという話が出ていたんだ」
「…へえ?」
「荒れ地でも咲いて、栽培が簡単で…なんて、そういう花は高い値がつくわけないかもしれないんだけどね…品種改良の土台としてはいいんじゃないかと思ってさ」
「荒れ地でも咲く…ってわけでもないけど、丈夫な花だと思うよ」
「そうなのか?」
「うん。実は、これ…フランソワーズが育てた花なんだ」
「え?ホントか?」
「うん…ココで初めて咲いた花だから、ピュンマにあげたい…って、今朝切ってたよ」
「…そうか。ナルホド」
「ピュンマ…?」
「ということは、アレか…特別な品種ってわけじゃなくて、たんに発育が悪いだけ…かな」
「…え?」
「いや、なんでもない…うーん…それにしても、栽培が簡単で荒れ地でも育つ、という条件には合うってことになるなあ…」
「……」
 
「うん、やっぱり、種を分けてほしいな。品種を確認しておきたい」
「だから、ひまわりだってば」
 16      超銀
 
「え…?バラ、だよね?」
「ふふふ、さすがにそれはわかってるさ…ただ、ずいぶん珍しい品種だと思ってね」
「そうかい?僕にはよくわからないな」
「色がね、そもそも違う。見事なブルーローズだよ…染めたわけでもないだろうに…明らかに新種だね。だれがどうやって手に入れてきたんだい?」
「そういえば、研究所で咲かせた…って聞いたかもしれない。ギルモア博士、バラの品種改良なんて趣味あったのかな…あ、フランソワーズ!」
「…どうしたの?…まあ、ジョーったら…!もう見つかってしまったのね!」
「ふふ、すまない…ところで、君なら知ってると思うんだが…ピュンマが、このバラの名前を知りたいっていうんだ」
「え…この、バラの名前?」
「うん。新種なんだろう、フランソワーズ?…ジョーに聞いたんだけど、さっぱりでね」
「まあ…。ええ、たしかに、新種のバラよ。名前は、プリンセス・ファンタリオン」
 
「…え?」
「なん…だって?」
「プリンセス・ファンタリオン」
 
「……」
「……」
 
「コズモ博士とギルモア博士が共同研究で作られたの」
「ふ、ふうん…?」
「この色は、遺伝子操作で出したんですって」
「…遺伝子?」
 
※※※※※※
 
「……」
「なあ、ジョー…遺伝子ってさ」
「…うん」
「何の遺伝子だろうな?」
「何の…って?」
「何のっていうか…コズミ博士、どこから持ってきたっていうか…いや……ゴメン」
 
「……」
「……」
 
「まあ、変に考え込まない方がいいよな、ウン。おそらくまだ未発表の新種なんだろうから…科学者として、色々な意味で渾身込めた…に違いない作品を特別にいただいた…ってことなんだろう…ありがたいことだ……ん?ジョー…どうしたんだ?」
「ピュンマ…バラって、5月にも咲くものかい?」
「5月にも…っていうより、むしろ5月に咲くものだろう、フツウ」
「…気を、遣ったのかな…」
「…そうなんじゃないか?」
 
「……」
「……」
 
「プリンセス・ファンタリオンか…タマラ、って名前じゃないのも…つまり、気を遣ったってことなのかな…」
「うーん…そうとも限らないぜ、ジョー。プリンセス・タマラはもう存在していた…からなのかもしれないし」
「ええっ?…ほ、本当か?!」
「い、いや!いや、わからない…わからないよ、そんなことっ!」
 17      旧ゼロ
 
「やっぱり珍しいかな?日本の秋の花で、七草って言うんだ」
「ほう…まだ暑いのに、秋、なのかい?」
「ああ、日本人は季節の先取りが得意なのさ…もちろん、この辺ではまだまだ咲かないだろうけど…花屋には用意してあるらしくてね、フランソワーズが見つけてきたんだよ」
「面白いな…見たことのない花ばかりだ…全部わかるかい、ジョー?」
「もちろん。コレがススキで…こっちがオミナエシにフジバカマ。これは萩。青いのは桔梗。ピンクのが撫子さ」
「ふうん…あれ?6つだぞ?」
「ああ、もう一つは葛なんだけど…ちょっと花束にはしにくい花だから、入っていないんだろう」
「大きい花なのかい?」
「大きいだけじゃなくて、蔓性の植物なんだ」
「なるほど…うん、可憐だなあ…日本らしい、繊細な花だね」
「僕は、もっとハッキリした花の方が、なんていうかなあ…わかりやすいと思うけどね」
「ふふ。ハッキリした…ってなんだよ?」
「いや…バラとか、百合とかさ…いかにも花だ!って感じのがね」
「たしかにそうかもしれないが…自分の部屋に飾るんなら、こういう花の方が気持ちが休まるかもしれないぜ?」
「うーん、そうなのかな…とにかく、フランソワーズの趣味だからさ」
「そうだな、彼女らしい趣味だ…嬉しいな」
「そうかい…?」
「うん?」
「いや。コレ…彼女らしい趣味、なのかな」
「俺はそう思うけどな…違うのかい?」
「違う…とか、そうじゃなくて…ふーん、そうかなあ…?」
「ああ。そういえば、君は彼女の誕生日にカトレアを贈っていたもんな」
「…えっ?!」
「心配いらないさ。それはそれで彼女、大喜びしていたぜ?」
「ちぇっ!…女の子って、どうしてこうおしゃべりなんだろうな…!どっちみち、しかたないんだよ…だって、1月だぜ?どうしたって、温室咲きの花しかないんだから…」
「まったくだ…よかったよな、言い訳ができて」
「なんだよ、ソレ?」
「いやいや、こっちのこと…とにかく、俺は8月生まれでよかったよ…こんな可愛らしい花束がもらえるんだから」
「……」
「…ジョー?」
「やっぱり、よそう」
「は…?」
「可憐…といえばそうかもしれないけど、なんか、貧弱なんだよな…誕生日のプレゼントにしては」
「そんなことないさ…俺はすごく気にいったぜ?」
「大体、非常識なんだ。日本じゃこんな花、雑草みたいなモノなんだし…」
「ヒドイ言い方だな。別に構わないさ。俺はすごく気に…」
「失敬。もう一度、選び直させるよ…ちょっとは常識を考えてもらわないと」
「そんな、もったいないコトするなって…!第一、俺はその花束…」
「コレは僕の家に飾る。むだにはならないよ…じゃ、楽しみにしていてくれたまえ」
「だから。俺はそっちの花束の方がずーっと欲しいんだけど…って言ったら?」
「頼むから、無理を言わないでくれよ、ピュンマ」
「…無理か。いや、そうなんだろうけどなぁ…」
 18      原作
 
「いや…僕に聞かれても」
「確かにね…でも、君が買ってきてくれたんだろう?」
「花屋さんに頼んだだけだからさ…誕生日のプレゼントにするから…って」
「それだけでこんなに作ってくれるのかあ…スゴイな」
「予算とか、イメージとかは伝えるんだけどね」
「イメージ?…へえ、僕のイメージってどういう感じなんだい、ジョー?」
「え…いや。だから…コレみたいな感じ、かな」
「ハハ…しょうがないな…君らしい答だ」
「なんだよ、それ…実をいうとさ、そんなに苦労しなくてすんだんだ…君を見たことのある花屋さんだったし」
「え?…どういうことだい?」
「一度だけだったのかな?…でも、印象が強かったみたいで。ああ、あの素敵なガイジンさんですね…って言ってた」
「ふうん…?一度…ああ!あの花屋か!…たしかに一度しか行っていないと思うな…というか、僕なんか、ただ君にくっついていただけだったのに…商売するヒトって、スゴイもんだなあ…」
「うん。ホントにそうだね」
「あのときだって、あっという間だった…君の顔見るなり、ぱぱっと作ってさ…ああいうの、君にはむいてるよな、君、ほとんど何もしゃべらなかったじゃないか」
「まあ…慣れてる…し。いい花屋さんだよ」
「そうだな。あの花束だって、素晴らしかったもんな…うん、なるほど…それじゃ、ちょっと信用しようかな。僕はこういうイメージなんだなあ…ってね」
「あの花束…って。覚えてるんだ、君」
「ああ。驚いたからね。まさに、彼女が花だったらこう!って感じの花束だった」
「ふうん…それにしても。覚えているなんて、君もスゴイよ、ピュンマ。…僕なんかとても」
「そりゃ、無理もないさ。君の場合。いちいち覚えていられなくても」
「…いちいちって。僕は別に、そんな」
「ふふ。そうだ、今度君の誕生日には、その花屋にいってみよう…君のイメージの花束ってどんな風になるのか、興味あるな」
「ええっ!?」
「まさに、何も言う必要ないだろうし、君については。その花屋さん…そうだろう?」
「頼むからやめてくれよー!冗談じゃない!」
「冗談じゃない…って。ヒトにはさんざんやっといて、それはないだろう?」
「だから、さんざん…なんてほど、やってないってば!」
「そうかあ?やってるんだろ?」
「やってない!」
「別にかくさなくても…」
「やってないって言ってるじゃないか!」
「…って、何を?」
「…へ?」
「あ。いやいや。こっちのコト……うん」
「うんってなんだよ?…何納得してるんだ!」
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Last updated: 2010/8/24