土産
 
ジョーが書いてくれた地図を頼りに、フランソワーズはその店に難なく到着した。
彼の指示はいつも適確だし、この街も整然と区画分けされていて比較的歩きやすい。
 
ジョーは念のため……と、店の外観の写真まで携帯に送信してくれた。
そして、今目の前に、それと同じのれんが下りている。
だから、間違いないはずなのだが……それでもフランソワーズは躊躇した。
彼の言葉の意味がようやくわかった気がする。
 
「たぶん、お菓子を売る店には見えないし、入りにくいと思うけれど……大丈夫だから」
「本当…?イチゲンサンは駄目、というお店ではないの?」
 
よくそんな単語を知っているね、と大笑いされたのは昨夜のこと。
やっぱり一緒に来てもらえばよかったわ……と、フランソワーズは少し後悔したが、今さらどうにもならない。
大丈夫、というのだから大丈夫にちがいないわ、と深呼吸してから、彼女はおそるおそるのれんをくぐった。
 
店の中は薄暗く、やはり菓子を売る店らしい感じではない……が、隅に古いショーケースのようなものがあり、そこにひっそりと見慣れた小さい箱が並んでいる。
奥から静かに出てきた店員も、物静かながらにこやかで親切だった。
フランソワーズはようやくほっとして、目当ての美しい砂糖菓子を見つけ出し、いくつか包んでもらった。
お国におみやげですか、と聞かれ、はい、と答える。
 
包装も手提げ袋も、いかにも日本らしく、どこかものものしいような感じがするほど立派だった。
ジョーがこの袋を持っているのは見たことがないような気がする。
彼はいつも……そう、たぶんポケットからこの小さい箱を取り出して、おみやげ、と笑うのだ。
 
初めて見たときは、それが食べ物だとは思わず、ただその美しい細工に驚嘆し、ためらいながら口にして、繊細な甘さにまた驚いた。
日本には何度も来たことがあったし、和菓子にも詳しくなったと思っていたけれど、こんな菓子は見たことがなかった。
どこで買ったの?と熱心に尋ねるフランソワーズに、ジョーは内緒、と答えた。
 
「こんなに喜んでもらえるなら……秘密にしておいた方がいいような気がする」
「まあ、ひどい」
 
冗談ではなかったらしく、彼は本当にその菓子についても店についても何も教えてくれなかった。
もちろん、箱には店の名前とその所在地が書かれていたが、ガイドブックには載っていない店らしく、実際にその街に行かないことにはどうしようもなさそうだった。
そして、その街はギルモア研究所からも、彼女が所用で立ち寄るどの大都市からも遠かった。
 
久しぶりの休暇でジョーと楽しんだ小旅行のエリアが、この街の近くだったのは偶然だったのか、フランソワーズにはわからない。
ただ、彼は最後の晩、おみやげを買わなくちゃ……とつぶやいた彼女に、それなら、アレにするといいよ、と不意に言ったのだ。
 
「嬉しい。でも、いいの?…内緒じゃなかったの?」
「もう、その必要はないからね……違うかい?」
 
そう聞かれても、彼の言葉の意味自体がよくわからない。
それでも、フランソワーズはとりあえずうなずいていた。
 
一緒に行こうか?という申し出には、少し迷いながらも、首を振った。
どうしてなのか、これもよくわからない。
もちろん、ジョーにもわからなかったに違いないが、彼はただ、わかった、とうなずいた。
 
ほぼ時間どおりに、待ち合わせのカフェに入ると、彼はもうテーブルに座っていた。
フランソワーズが提げている紙袋に目をやり、無事に行けたみたいだね。と笑った。
 
「素敵なお店を教えてくれてありがとう、ジョー。きっと、みんな喜ぶわ。私のお友達、日本びいきの人が多いのよ」
「そうか……よかった。それじゃ……これ、君に新しいおみやげだよ」
「……え?」
 
ジョーがポケットから取り出した小さい箱に、フランソワーズは目を丸くした。
 
「まあ。……もしかしたら、新しい秘密…になるの?」
「それは、君次第だな」
「……開けてみていいかしら?」
「もちろん」
 
ていねいに箱を開け、そうっとソレをつまみ上げるようにしてまじまじと眺めているフランソワーズに、ジョーは吹き出した。
 
「まさか、食べるつもりじゃないよね…?」
「……」
 
砂糖菓子……には見えないけれど。
……でも。これって。
 
まだぼんやりしているフランソワーズの手から、ジョーはそっとその指輪を取った。
 
「どうするものか……わからないかい?」
「……あの」
 
ジョーはわずかなためらいも見せず、それを彼女の左手の薬指にはめ、そのまま彼女の青い瞳をじっと見つめた。
 
「フランソワーズ……?」
「……」
「いや……かい?」
「あ……そう、じゃなくて……でも」
 
フランソワーズははっと我に返り、慌てて手を引っ込めると、うつむいた。
頬が燃えるように熱くなっていく。
やがて。
 
でも、おみやげ……なんでしょう?と、ようようつぶやく彼女に、ジョーは笑った。
 
「それもいいかもしれない。それなら何度トライしても大丈夫だね」
 
…ね、と目配せされても、どう答えたものかわからない。
フランソワーズは、ただ小さくうなずいた。
叶わぬ願い
 
名残惜しそうに唇を離すなり、ボルテックスは……と、突然つぶやくように言い出したジョーを、フランソワーズは驚いて見上げた。
 
「ボルテックスは、どんな願いでもかなえてくれる存在ではなかった」
「……ジョー?」
「一番強く願ったはずのことがいつまでもかなわない」
「……」
 
そのままじっと見つめる彼の視線の熱に、どうやら自分のことについて何か仄めかしているらしいと気づいたフランソワーズは思わず頬を染め、うつむいた。
 
「フランソワーズ……このまま、僕と一緒に」
「いいえ、それは無理よ」
「無理なんかじゃない…!」
「やめて。わかっているくせに…私は、今、バレエ団を離れるわけにはいかないし、あなただって、明日のことを考えたら、ここでこんなことをしていてはいけないのよ」
 
なだめるように言いながらも、フランソワーズは、彼が本当はちゃんと納得しているということをわかっていた。
案の定、ジョーは深い溜息をつきながらも、ほどなく彼女を離すのだった。
 
「ボルテックスの力をコントロールすることはできなかった。それをしようとしたから、ゾアは滅びた。ボルテックスはね、フランソワーズ……ただ、どんなに願っても、叶わない願いだけを叶えてくれたんだと思う」
「叶わない……願い?」
「うん。……逆に、自分でどうにかできる望みをかなえるためにボルテックスに祈るということは……つまり自分の意志によるコントロールと同じだ。それはできないことなんだよ」
「……」
 
わかるようなわからないような曖昧な気持ちのまま、フランソワーズは小さくうなずいた。
彼の言う「自分でどうにかできる望み」というのが、このまま二人離れずに生きていくということなら、いつかきっとそれは自分たちの力で実現させることができるのだろう。
明るい展望は正直、見えてこないのだけれど……
 
……それとも。
 
「少し違うような気がするわ。あなたはただ、望む必要のないものを望んだのよ。ボルテックスはそれをわかっていたのかもしれない。叶わなかったんじゃなくて……叶える必要がなかったんだわ」
「……フランソワーズ?」
 
私は……いつでも、あなたのものだもの。
そうでなかったことなんかない。
今だって……。
牛の名前
 
よぉ、と肩を叩かれ、ジョーは実際ぎょっとした。
どんな状況であろうと彼をぎょっとさせることができる人間はそう多くはなく、もちろん、ジェット・リンクはそのうちの一人であった。
 
「どうしたんだ、ジェット。君、カナダにいるんじゃ……」
「一応、仕事のついでさ。牧場視察ってヤツな」
「なるほど。たしかに、こっちはいい季節だね。でも、向こうだって収穫の時期なんじゃないかい?」
「それはそうだが……まだ1年目だからな。それに、アイツ一人いりゃ、それぐらいはどうにでもなる……らしいぜ」
「それって。忙しいからむしろ邪魔にされて、体よく追い払われたってことかな?」
 
ジョーは、几帳面で勤勉で完全主義者のドイツ人を思い浮かべつつ、思わず苦笑した。
ジェットはふん、と肩をそびやかした。
 
それにしてもどこから入ってきたんだよ、と尋ねようとして、ジョーはやめた。
元レーサーであり、サイボーグ002でもある彼なら、問題は「立ち入り禁止」の表示をどのように解釈して行動するか、ということだけであり、ジェット・リンクであれば、そもそもそうした表示があることにすら頓着しないだろうということも容易に想像できる。
 
もしかしたらレースに復帰するつもりなのかな、と僅かに期待しかけたジョーだったが、牧場経営について熱心に話し始めたジェットの様子からは、そういう意志は受け取れない。
当然といえば当然だ。
 
「オマエ、このレースが終わったら、俺と一緒に来ないか?ちょっとは息抜きも必要だろうが」
「うーん……そうしたいけど……」
 
時間なら気にするなよ、と意味ありげに笑うジェットはまさに002の表情をしていて、やっぱり自分で飛んでいくつもりなのか、とジョーはややたじろいだ。
有事のときならともかく、オーストラリア・カナダ間は結構遠い。
もっとも、それほど本気で言ったわけでもないらしく、ジェットはあっさりと話題を変えた。
 
「雌牛を少しふやしてみるか、なんて考えているのさ。あまり規模を大きくすると面倒だが、ジェロニモが来てくれそうな感じになっててな」
「へえ。それは心強いな」
 
これなんだけどな、と牛の写真を取り出すジェットに、そんなものを持って歩いているのか、とジョーはしばし感心した。
ジェット・リンクはたしかに真面目な男だが、ハインリヒに誘われ、あまり考えもなく始めたようにも見える仕事だったので、大丈夫かなという気持ちもあったのだ。
 
「コイツが、いいコなんだよな……気だてがよくて、その上べっぴんだ」
「ふうん…?牛にも個性ってあるんだね」
「ああ。そりゃ当然さ。……なあ、ジョー、コレ、どう思う?」
 
どう思う、とジェットが指さしたのは、ごく薄い茶色の毛並みをしたおとなしそうな雌牛の写真だった。
どう思うと言われても困るなあ……と、ジョーが戸惑っていると、ジェットはにやっと笑った。
 
「フランソワーズ、って名前にしようと思ってるんだが」
「はぁっ?!」
 
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
ジェットが何を考えているのかよくわからない。
 
「そう驚くなって……どこか似てないか?」
「……そう、いわれても」
 
たしかに、彼女の髪の色と毛色が似ているといえば少しは似ているかもしれない……が。
問題はそういうことではなく……
 
「ハインリヒが承知しないだろ、そんなこと……」
「そうか?…だが、最初に入れたヒツジにアイザックって名前をつけたときは何も言わなかったぜ?」
「……ジェット」
 
まさか、いちいち僕達の名前を動物につけるつもりじゃないだろうな、と言いかけたジョーは、ジェットがまさにそのつもりでいることを悟り、思わず嘆息した。
 
「もしかして、僕の名前も何かにもうついているのかい?」
「いや……オマエの名前は、このフランソワーズが子牛を産んだらつけようかと」
「なんだよ、ソレ?!」
 
すっかり脱力しているジョーに、いいじゃないか、フランソワーズの乳が飲めるぞ、とジェットは嬉しそうにたたみかけた……が。
 
「……冗談じゃない」
「ん?」
 
ジョーの声音がいきなり変わったので、ジェットは咄嗟に身構えた。
何だか、不穏な気配がする……気がする。
ちょっと言い過ぎたか、と反省しかけたとき。
 
「やっぱり駄目だ。フランソワーズなんて……」
「なんでだ?…ああ、俺たちが乳搾りするのが我慢ならない、とかか?…器が小さいぜ、ジョー!」
 
笑い飛ばそうとしたジェットは、次の瞬間、文字通り背筋が凍るような感触を味わった。
 
「そんなことよりも、そもそも雌牛ってさ……種付けするモノだよね?」
「……」
「……いくら僕でも、暴れるかもしれないよ?」
 
ジョーはあくまで穏やかに微笑していたが、その笑顔がまったく当てにならない危険なモノであることを、ジェットは長年のつきあいで熟知していた。
 
コイツに暴れられたら、牧場経営どころではない。
ジェットは大急ぎで冗談だ馬鹿、と一笑に付してみせつつ、とりあえずしこたま飲ませてなだめるか、いやそれでは逆効果かもな……などと慌ただしく思いをめぐらせるのだった。
 
プリン
 
失敗だわ……と独り言を言いながら、フランソワーズが残念そうに大きな鍋をのぞきこんでいる。
イシュメールに乗り込んでから、食事の担当は張々湖と決まっている。今回に限らず、戦闘時にはいつもそういうことになっていたので、そもそも彼女が一人でキッチンにいること自体がちょっと珍しい。
どうした、とジョーが尋ねる前に、気配に気づいたフランソワーズが顔を上げた。
 
「ジョー。サバと、お菓子の話になって……それで、プリンを作ってあげるって約束したのに、失敗してしまったの」
「プリン……って、あの、プリンかい?」
「ええ、カスタードプディングよ。簡単だから、と思ったんだけど、火加減がうまくいかなくて……やっぱり大人に頼めばよかったわ」
「ふうん……?」
 
隣からのぞき込むと、たしかに鍋の底にいくつか金属の型が並んでいるし、中にはプリンらしきモノが入っている。
色も黄色いし、いい匂いがしているし、ちゃんと固まっているらしいし、何が失敗なのかよくわからない。
けげんそうなジョーに、フランソワーズは思わず笑って言った。
 
「火を入れすぎたのよ……ほら、こんなにすが立ってしまったもの。これじゃ、ぼそぼそしてしまっておいしくないわ」
「……そう、なんだ……?じゃ、コレはみんな捨ててしまうのかい?」
「捨てるほどではないから……少しずつ食べるわ。大丈夫よ」
「だったら、ちょっともらってもいいかな?」
「え……でも」
 
フランソワーズが、戸惑ってはいるものの拒絶はしていないと見てとり、ジョーはまだ湯気が出ている鍋に無造作に手を突っ込み、金属のプディング型をひとつ取り出した。
相変わらず、張大人はどんな調理器具も運び込んでおくんだなあ、としばし感心する。
 
プディング型はまだ相当熱く、フツウの人間なら素手で持つことは難しいかもしれなかったが、もちろんジョーには何の問題もない。
心配顔のフランソワーズからスプーンを受け取り、ひとさじ掬って口に入れた。
 
「ジョーったら。……せめて冷やした方がまだ食べられると……」
「おいしいよ、フランソワーズ」
「え…?」
 
ジョーは感心したようにプディング型を捧げ持ち、ひとつ全部食べてしまってもいいよね?と尋ねた。
もちろん否やはないものの、フランソワーズは探るようにジョーを見上げた。
 
「無理しなくていいのよ……」
「無理なんかしていないさ。僕は、これ、好きだな。……売っているプリンとは全然違うね」
「そ、それは……だから、ひどい失敗をしているからよ」
「そう?」
 
不思議そうに首を傾げ、ジョーはいかにもおいしそうにあっという間にプディング型を空にしてしまった。
 
「これ、誰も食べないなら、残りも僕がもらってもいいかい?」
「ジョー、本当に無理は……」
「あ、そうか。もともとサバに作ってあげたんだっけ。そんなことをしたら悪いかな」
「い、いいえ……サバには作り直すつもりでいるから……でも、ジョー」
 
そうか、それなら問題ないね、とジョーは嬉しそうにうなずいた。
 
それからほどなく、フランソワーズは今度は無事にカスタードプディングを蒸し上げた。
サバだけでなく、仲間達にもそれは振る舞われ、おおいに好評を得た。
……のだが。
ジョーだけが、なんともいえない微妙な表情をしているのに、フランソワーズは気づいてしまった。
 
――もしかしたら、この人……本当にあの失敗した方をおいしいと思っているのかしら?
 
信じられないが、そうなのかもしれない。
案の定、その後もフランソワーズはキッチンで、例の失敗作を幸せそうにこっそり食べているジョーを何度か見たのだった。
 
ある日、それに気づいたグレートが、さすが愛の力は違うとかなんとか、例の芝居がかったセリフ回しでからかうと、ジョーは真顔で反駁した。
 
「そんなんじゃない……ただ、懐かしかったんだ。子供の頃、クラスの子の誕生会に呼ばれたとき。そこの家のお母さんが作ってくれたプリンがこんな感じで……すごいなあ、と思ってね。ちょっと、うらやましかった。それを思い出したんだよ」
「やれやれ。そこんちのお母さんとやら、料理の腕はイマイチだったのか、それとも……」
 
グレートはふと口を噤んだ。
 
それとも。
もしかしたら、子供だったジョーは、さほど大切ではないゲストとして扱われていた……のかもしれない。
あまり考えたくないことではあるが。
 
もちろん、グレートはそれ以上そのことについて考えなどしなかった。
だから、彼はただこう言った。
 
フランソワーズが悩んでたぞ。
今度作るときはどうしたらいいのかしら……ってな。
ひとすじの道
 
僕はそんな人間じゃない、と叫んでしまいたくなることがある。
 
009の強さを、僕はよく知っている。
それが僕なのだと言われたら、納得はできないけれど、うなずかなければならないのだということもわかっている。
そうする以外に、僕が生きる道などないのだから。
 
タマラの細いなめらかな指。
汚れをしらない深い瞳。
純真をそのまま形にしたような彼女が、009に最後の助けを求めてすがりつく。
僕は、受け止めるしかない。
迷いながら……畏れながら。
 
 
僕はそんな人間じゃない。
でも、他の生き方は許されない。
 
彼女の手を振り払っても、違うと叫んでも、どこまで逃げても、僕に他の道はない。
それでも、僕は生きたいから。
だから、僕は……。
 
……フランソワーズ。
 
あなたにはできるわ、と君が微笑む。
そのたび僕の荷物は重くなる。
でも、その重みが、今日も僕の命をつなぎとめる。
 
僕は生きたい。
地の果てまでも君が見守る、この世界で。
青いイヤリング
 
珍しいな、とピュンマは思った。
久しぶりに再会したフランソワーズが、青いイヤリングをつけている。
 
いまひとつ自信はないが、彼女がイヤリングをつけているのを見たことはないような気がする。
一方で、ネックレスやブレスレットには覚えがあるのだ。
ということは、これもまたもうひとつ自信はないが、イヤリングは彼女が索敵をする時に邪魔になったりするのかもしれない。
 
そうだよな。
ネックレスやブレスレットはするんだから、イヤリングだって普段はつけるんだろう。
ただ、僕たちが知っている彼女は「003」だから、それを見たことがないだけで。
 
そして、そう考えるのなら、今、ここに到着したばかりの彼女はまだ「003」になっていない……ということなのかもしれないが。
しかし、謎の宇宙船に目をこらすはりつめた横顔は、「003」以外の何者でもない。
 
そのときは、ほどなく、宇宙船に動きがあるのを彼女が感知したため、ピュンマはそれ以上そのことについて考える時間を持たなかった。
 
 
再び彼がソレを思い出したのは、地球に帰還して間もなくのことだった。
女性らしい私服に着替えた彼女の耳に、やはりあのイヤリングが光っている。
よく見ると、そこそこ大ぶりの青く透明な石……か、もしくはクリスタルガラスか。
 
で、どうも彼女は服に合わせてというよりは、ソレを身につけることをひとつの原則としているようで、なおかつ今彼女の手元に今あるイヤリングはそれひとつだけのようなのだった。
 
貰い物だとしたら、贈り主はジョーなんだろうな、とピュンマは思う。
フランソワーズは思わせぶりや駆け引きを恋人に仕掛けるタイプの女性ではない。わざわざ他の男からもらったものを彼の前で身につけることはしないだろう。
 
どうでもいいよな……と思いながらも、ピュンマはちょっとジョーをつついてみようと思い立った。
どうでもいいようなことだからこそ、つつける、のだとも言える。
 
フランソワーズのあのイヤリングだけど、彼女にしては珍しいね。君からのプレゼントなのかい?と、直球で切り出した瞬間、ジョーの表情が僅かに、しかし確かに動いた。
お、やっぱりそうだったのか、とピュンマが膝をたたきかけたとき。
ジョーは困惑しながらこんなことを言うのだった。
 
「そうかもしれないけれど。よく……わからないんだ」
 
……わからない?
 
わからないのは君だ、と言いそうになるのをピュンマは懸命にこらえた。
 
「つまり、プレゼントしたような気もするし、していないような気もする……ってことかい?……君、大丈夫なのか、そんなんで……」
「いや……その。プレゼントはしたことがあるんだ……けれど」
 
――アレだったかどうか、自信がない。
 
と、ジョーは溜息をつくのだった。
なるほど、とピュンマは思う。
 
さすがのジョーでも、女性が男性から贈られた装身具を特に大切に身につける、ということの意味合い……のようなものについてはわかっているらしい。
で、アレが、間違いなく彼の贈ったものならば、喜ばしいことだ。
だが、そもそもソコに確信が持てず、更に言うと、もしかしたら他の男からの贈り物という可能性もあるんではないか、とまで考えてしまうのなら、それは自信もなくなろうというものだ。
 
もちろん、どうして自分の贈ったモノがどんなモノだったかを忘れてしまうのか、ということが根本的な問題なのだが、それについてはまあジョーだからなあ……ぐらいにピュンマは思うのだった。
 
こうなったら、本人に聞くしかない……とピュンマは覚悟を決めた。
どうでもいいと思っているくせに何をやっているんだろうと我ながら思うのだが、乗りかかった船、という気分になっているのかもしれない。
 
概してソツのない男であるピュンマは、この件についても、もたつきなどしなかった。
彼は、ごくさりげなく、スマートに、それ、よく似合っているよ、とフランソワーズに話しかけ、ジョーにもらったのかい?とこれもまたさりげなく尋ねた。
 
「……ええ」
 
フランソワーズがあっさり即答し、しかも幸せそうに頬を染めたので、ピュンマは大いなる安堵とわけのわからない脱力感を同時に味わった。
 
「うれしいわ……褒めてもらったの、初めてよ。ジョーは何も言わないし、やっぱり似合わなかったのかもしれないって思って……」
 
いや、似合うと思ってるんだよ、彼も。
で、だから困ってるんだよね……ソレが本当に自分の贈ったモノなのか、自信がないらしいんだ。
 
と話してやった方がいいのか、それともやめておいたほうがいいのか。
どうにも決められないので、ピュンマはとりあえず黙っていることにした。
 
星空の下で
 
この季節のこの土地にはめずらしく空には雲ひとつない。
白い息を吐きながら満天の星空を見上げ、フランソワーズは素晴らしいわ……と、目を輝かせた。
 
「寒くないかい?」
「ええ……さっき、お風呂で十分温まったもの、気持ちいいくらいよ」
「油断していると湯冷めするぞ」
 
ジョーは苦笑し、着ていたコートを脱いで、彼女の肩に着せかけてやった。
彼女の頬は柔らかいバラ色を帯び、確かに寒さを感じてはいないようだったが、高く降り積もった雪の中に立っていると、華奢な姿はいかにも頼りなく見える。
フランソワーズはありがとう、と言うと、そっとコートの襟をかき合わせ、また空を見上げた。
 
降り注ぐ星空に、吸いこまれそうだ……と思ったとき。
ジョーはおぼえずつぶやいていた。
 
「タマラは……あのとき僕に、あの星に残ってほしいと言った」
「……」
「王となって、彼女とともに星を導き、やがては新しい子孫を……」
「……」
「今思うと、途方もないことだったな……あのときも、そう思ったけれど。僕なんかには、とても……」
「いいえ。……あなたなら、できたと思うわ」
「……フランソワーズ?」
「そうね……たしかに途方もないことかもしれない。でも、あなたなら、できてしまったと思う。だって、あのひとには、本当にあなたの助けが必要だった……そういうひとのためなら、あなたはどんなことでもできるわ」
「そんなことは……」
「あなたは、そういう人だもの。私、よく知っているつもりよ……誰よりも」
「……」
 
ジョーは、身じろぎもせず空を見上げているフランソワーズの手を、そっと握りしめた。
 
「僕は、あのときタマラを助けたいと……たしかに思った。もしかしたらそうできたのかもしれない。でも、そのためには……きっと、君が、傍にいてくれなければ駄目だった」
「……ジョー?」
「僕は、誰かを救えるような、たいそうな人間じゃない。それなのに、もし君にそう見えるのだとしたら……それは、君が見ていてくれるときなら、それに近いことができるからだよ」
「……」
「フランソワーズ。もし、あのとき僕が頼んだら……君も、あの星に残ってくれたかい?」
「……」
 
フランソワーズはジョーを振り返り、大きな目で見つめた。
同時に、ジョーは人差し指を彼女の唇にそっと押し当てた。
 
「ごめん……言わなくていいよ」
「……ジョー」
「君は、僕を甘やかさなくてもいいんだ」
「ジョー……ジョー、もしあなたが本当に望んだのなら……あなたが、望むのなら、私……!」
 
ジョーは寂しい微笑を浮かべると、黙って首を振り、フランソワーズを抱き寄せた。
 
「でも、それでは幸せになれなかった……僕は」
「……」
「だから……これでいい」
「ジョー……」
 
ごめん、と彼がつぶやいたような気がして、フランソワーズはそっと彼の背中に腕を回した。
彼が誰に謝っているのかはわからない。
それでも、ただ、いいのよ……とだけ、伝えたかった。
誤解 その2
 
出撃前、イシュメールは武装強化だけでなく、居住空間にも、地球人の習慣に合わせた細かい改造が必要だった。
それほど時間をかけるわけにはいかなかったが、例えば張々湖は厨房にかなり手を入れたし、基本、カプセルが並んでいるだけだった寝室にも、急遽、簡素な寝具が運び込まれたりした。
 
そういえば、シャワーはどうなっているのか、と口にしたのは009だった。
風呂好きな日本人として……というよりは、紅一点の003に配慮してのことだ。
彼女の性格では、こういう場合の多少の不自由はやり過ごしてしまうだろう。が、やはり女の子だからな……と009は思うのだった。
009から相談を受けたサバは、不思議そうに首を傾げた。
 
「ええと……つまり、地球の皆さんは、服と体を分けて別々に洗浄するのですか?」
「そういう……ことかな」
「……ってことは、サバ、コマダー星では服を着たままシャワーを浴びちまうってことなのかい?」
 
007の問いかけに、サバはにっこりとうなずいた。
 
「はい。ただ、水は使いません。カプセルに入ればよいのですが……」
「うーむ。またカプセル、アルか!」
 
006が感極まったようにうなった。
彼は厨房の改造の折、既に何度か思いがけないトコロで様々な「カプセル」に遭遇し、さんざん驚かされていたのだった。
 
「そうです。おそらく、皆さんも支障なく使えるものと思います。試してごらんになりますか?」
「うん。そうさせてもらうよ、サバ」
 
009がうなずき、早速、その場にいた007、006、002とともに「実験」をしてみた。
結果は思いの外快適で、これで問題ないだろう、ということになった。
 
「そもそも、宇宙船だから、水を大量に使うのはできたら避けた方がいいんだろうからな……」
「いいえ、それを気にする必要はありません。イシュメールではあらゆる物質を循環させるシステムが完備しています」
「なるほど……」
 
それじゃ、簡易シャワー室を設置することも一応、考えに入れておこうか、などと相談を始めるサイボーグたちに、サバは興味深そうに尋ねた。
 
「そういえば、皆さんは服をいろいろとお持ちなんですね……」
「あ……そう、だな」
 
そういえば、サバの服はいつも同じだ……というより、そうかそれは服だったのかと、サイボーグたちはそれぞれひそかに思った。
 
「君たちの星にはそういう文化はないのかい?」
「ええ」
 
009の問いかけにサバはコマダー星の服飾事情について語り始めた。
そもそも、コマダー星人には服を好みで着る、という発想がない。
服は皮膚の補助となるモノであり、ほとんど身体そのもののような感覚なのだという。
 
「じゃ、君が今着ている服は……どうやって選んだんだ?」
「選んだというわけでは……選ぶほど種類はありませんから。そのとき用いられた原料によって形や色はたしかに変わりますが。ただ成長に合わせて、必要になれば買うだけです」
 
なるほど、丈夫で着心地もよい素材で、しかも「洗濯」の必要がない…となれば、わざわざ着替えたりする必要はないのだろう。
しきりに感心しているサイボーグたちに、今度はサバが尋ねた。
 
「それでは、皆さんが着ておられる服は、皆さんがそれぞれ選ばれたもの……なんですか?」
「いや、この防護服は違うよ。僕たち地球人は、仲間であることを示すために、あえて同じ服を着ることもあるんだ。この研究所の人たちもそうだよ」
「興味深いお話です。では、皆さんの、その……髪型も、ご自分で選んでいらっしゃるということですか?僕たちコマダー星人は、こうして、頭部をカバーで覆って保護しているだけなのですが、皆さんは違いますよね」
「そう……だ、な」
 
002がなんとなく口ごもった。
その髪型は自分で選んでそうしているのかと正面から問われると、なぜか心許ないような気分になる。
そんな彼に苦笑しつつ、009はサバに説明した。
 
「僕たちはサイボーグだから少し違うんだけど……地球人の髪は少しずつ伸びるんだ。だから、それを色々な長さに切ったり、形を作ったりするんだよ」
「そうなんですか……!」
 
感心したように息をつくと、サバはふと007に目をとめた。
その視線に気づいた007は、不意に禿頭から亜麻色の髪をにゅう、と生やしてみせた。
 
「……すごい!」
「007!」
「ま、こういうことさ……わかったかい、サバ?」
「はい。なるほど…!」
「……」
 
いや、それ全然違う……と思いつつ、なんとなく脱力したサイボーグたちはさりげなく話題を変えた。
そしてその話が彼らの間で再び語られることは、ついになかったし、思い出されることも、またなかった。
検疫
 
申し訳ない、と、今日もコズモは繰り返した。
 
彼が謝らなければならないことではない……のだが、たしかに、謝りたくなる気持ちはわかる。
宇宙から帰還し、ほっとする間もなくサイボーグたちは「隔離」され、検査を受けた。特に、ファンタリオン星とカデッツ要塞に「上陸」した者たちには入念だった。
 
サイボーグたちは、地球に降り立つ前、既にイシュメールでヘルスチェックを受け、問題なし、とされていた。
コマダー星の文明も科学技術も、地球を遙かにしのぐものではあったが、それでも、全く未知の異星人の身体なのだ。思わぬ盲点があるかもしれない、という不安はたしかに否めない。万一でも、何らかの病原体などが検出されたら、人類の新たな危機につながってしまうだろう。
もっとも、そんな危険な病原体に感染しているのなら、当の本人も無事ではないに違いないが、彼らはサイボーグだ。だからどうなのか、ということも正直未知の領域に属するものだったが、それだけにこれで大丈夫ということは言い切れず、検査は徒に伸びていた。
 
それでも、一人、また一人とどうにか解放されていったのだが。
問題は003だった。
もともと生身の部分が多い彼女は、それだけリスクも高いと考えられていた。
更に、検査の途中で高熱を発し、倒れてしまったりしたので、話は一気にややこしくなった。
 
ギルモアは、どんな危険があろうとも娘同様の彼女を診察する、自分は老い先の短い身だから、万一のことがあっても惜しくはない、と主張し、隔離された検査室に入った。
ジョーもまた、ギルモアの助手を申し出たが、それは許可されなかった。
 
やがて、ギルモアは、彼女の症状をインフルエンザ、と診断した。
宇宙からの新型ウィルスか、と研究所には戦慄が走ったが、検出されたウィルスは現在この研究所で流行しているモノと同じ型だと判明した。
 
「しかし、それならむしろ博士が心配なのですが……」
「いや、大丈夫。儂はソレにもうかかっておる」
「そ、そう……ですか」
 
予防接種はしていなかったんですか、と喉まで出かかった言葉を、ジョーはのみこんだ。
ともあれ、ギルモアの素早い処置で彼女の熱はほどなく下がり、容態も落ち着いたのだが、それはそれで、検査は終わらないのだった。
 
ようやく彼女との短い「面会」が許されたのは、彼らが地球に帰還してかれこれ2週間が過ぎてからだった。
それこそ宇宙服のような防護服を着せられ、覚えず仏頂面になっているジョーを、フランソワーズはころころ笑って迎えた。
 
「大変だけど、仕方ないわ……来週には出してもらえるらしいし」
「……仕方ない、か」
 
ジョーはふとつぶやいた。
検査をしたからといって、何も問題は見つからないだろう。
それがわかっているからこそ、こんな茶番、と苛立たしくも思うのだが。
しかし。
 
もし、茶番ではなかったら……?
 
「え、ジョー…?!」
 
いきなり防護服を脱ぎ捨てたジョーを止める間もなく、フランソワーズはあっという間に抱きすくめられていた。
 
「だ、駄目よ!」
「こらっ!何をしておる、ジョー!?」
 
慌てて駆けつけたギルモアも怒鳴った。
かなり無粋な真似……なのかもしれないが、そうも言っていられない。
が、ジョーは彼女を抱く腕を緩めようとはしなかった。
更に。
 
「――っ?!」
「こ、こ、こここここの、馬鹿者ーーっ!」
 
鼻を真っ赤にして怒るギルモアに構わず、ジョーは見せつけるように彼女の唇を深く念入りに味わった。
実際、モニター前に駆けつけた相当数の研究所員に見せつけていたらしい。
もちろん、仲間達にも。
 
「アイヤー、何やってるアルか、009?」
「……うーむ。どうやらキレたらしいな、奴さん」
「こんなことができるんなら、今までだってもうちょっと何とかなったんじゃないかと思うけどなあ…」
 
なんとなくしみじみとピュンマが言った。
 
やがて、盛大な平手打ちをくらってひっくり返り、ジョーはようやくフランソワーズから離れた。
ギルモアはまたあっけにとられ、モニターの前でもおお、と感嘆の声が漏れていた。
 
「何を、考えているのっ、ジョー!?」
「これで僕も君と同じだ!」
「……え?」
 
ジョーは起き上がると、再びフランソワーズを抱き寄せ、ギルモアに言った。
 
「いいですか、博士。もしフランソワーズの体に何か問題があって、ここから出せないようなことになったら……僕も一緒です」
「……オマエは…っ……また何をややこしいことを……!」
 
ギルモアは頭を抱え、思わずその場に座り込んだ。
 
数日後。
予定より相当早く、フランソワーズは「解放」されることとなった。
そもそも問題がないことはあきらかで「念のために様子見」の期間に入っていたのだ。
で、こうなっては、様子を見るにも目のやり場がないような状態になるのではないか、とコズモが危惧した結果だった。
 
やれやれ、と肩の荷が下りた思いをしながら、ギルモアは、まさかアレが初めての接吻だったとかいうことはあるまいな、とふと思い、そんなことはどうでもいいではないか、くだらないことを思いつくな!と、自分に腹を立てるのだった。
ドライブ
 
ジョーが、連れて行ってくれたの……と、フランソワーズが嬉しそうに言う。
 
水仙の咲き乱れる春の海岸へ。
澄んだ青空に紅葉が映える秋の山へ。
誰もが無邪気な子供に戻る素朴な遊園地へ。
 
誰もそれにあえて異議を差し挟みはしない。
ただ、正確に言うと、彼が自分から彼女を誘ってそうした場所へ連れて行ったのではなく、彼女が「ここに行ってみたいわ」と言い、彼がそれに応えたということなのだ。
 
始めの頃は仲間に彼女が報告するたび「いや……」と、やや困惑した表情で口ごもっていたジョーだったが、さすがに慣れたのか、今は黙って微笑しているだけだ。
仲間達も、まあ要するにそういうことなんだろうということは十分わかっているので、わざわざツッコミを入れることもない。
そして、どちらが誘ったのかということはともかく、二人がしていることは要するに「デート」というものだろう、と誰もが認識しているのだが、当の二人にその自覚があるかどうかはわからない。
 
一度、グレートがごく軽い気持ちで、毎度毎度仲のよろしいことで……とかなんとかからかってみたところ、ジョーはごく真顔のまま言い放ったのだ。
 
「彼女を、知らない土地で一人で行動させるわけにはいかないだろう?」
 
――それって、彼女と一緒に行くのがオマエじゃなくてもいいってことか?
 
微妙に凍り付いた空気の中で、さすがのグレートもそう尋ねることはできなかったが、もし尋ねたら、ジョーは躊躇無くうなずくような気がするのだった。
そんなこともあり、以来ますますもって誰もこのことに特に触れようとしない。
それは、うかつに触れたら壊れてしまう、もろい砂糖菓子にも似ていて、仲間達にとってはやっかいであると同時に、無性に愛おしいものでもあった。
 
 
今日は、菜の花を見に行くついでに苺狩りをする予定だと、出かける前にジョーは淡々と告げた。
苺狩りってガラかよ、てめぇという言葉をのみこみつつ、仲間達は黙ってうなずいた。
 
ともあれ、フランソワーズは幸せそうな笑顔で「行ってきます」と告げ、何が入っているのかやや大きめのバスケットを提げたジョーも、彼女のために助手席のドアを開けながら、「後は頼んだよ」とこれもまた結構幸せそうに振り返ってみたりするのだ。
 
頼んだと言われても何を頼まれたのかもうひとつわからない。
というか、頼んだと言いたいのはむしろこっちだと思いながらも、やはり何も言わない仲間達だった。
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Last updated: 2015/11/24