その日、すべての連邦政府監視員に緊急招集がかかった。
僕たちの心は、個でありつつ、全ての人々とつながっている。
だから、その気になればどんな相手の心をも読むことができる。
しかし、その緊急招集は非常に切迫した感じだけ伝わってくるものの、それ以上のことが何も読めなかった。
僕は、不吉な胸騒ぎを抑えられなかった。
何も読めない、とはいっても、コトはおそらく「あの惑星」に関係しているに違いない。
悪の因子に塗り込められ、見捨てるしかないと判断され、ついに見捨てられたばかりの……あの惑星。
僕たちが「青の惑星」と呼び……彼らが「地球」と呼ぶ、あの惑星だ。
――諸君。信じられないことが起こった。
やがて、監視員のリーダーの“声”が聞こえた。
――「青の惑星」から、悪の因子が消滅した。完全に、だ。
僕は驚いた……もちろん、他の監視員たちも同じだ。
――まさか!……連中の罠、ではないのか?
――もちろん、それは確認しなければならないが……今のところ、そうした兆候は認められない。
――ありえない……何が起きた?先日の調査では、そんな傾向は……
次の瞬間、はっとした僕に、全員の心が集中した。
――“彼ら”とは、あの、9人のことか?!
僕が思い浮かべた彼女……フランソワーズのイメージを共有した仲間達は、次々に僕に質問を浴びせかけた。
――たしかに、可能性はゼロではないが、かぎりなくゼロに近かったはずだ。
――どういうことか、わかりません。でも、彼らなら、あり得るかもしれない。知ってのとおり、彼らの仲間のひとり……001は、この世界に来て、僕と話をしました。悪の因子を消滅させる方法を、彼らは懸命に探していた。
ざわめく僕たちの心を、更に新しい情報がかき乱した。
「青の惑星」からの“帰還”の流れがふっつりと止まった、というのだった。
それは、つまり……
信じられないが、信じなければならないだろう、という結論に僕たちが達するのに、それほど時間はかからなかった。
「青の惑星」から、悪の因子が完全に消滅した……のなら、“帰還”の必要はない。
つまり、今、「青の惑星」には僕たちと同じ……いや、もしかしたら異なるかもしれないが……モノたちがいる、ということだ。
――無論、「調査」をしなければならない。しかし、これまでと同じ方法ではとても追いつかないだろう。
それが僕たちの結論だった。
「青の惑星」のある場所は、僕たちの能力をもってしても「近い」とは到底言えない。
惑星の全てをくまなく調べ尽くすには……
――呼び戻そう。あの惑星を…!
僕は、胸が震えるのを抑えきれなかった。
大丈夫、落ち着け……というように、仲間がそっと肩をたたいてくれた。
「青の惑星」から“帰還”してきた多くの人々。
その中に「彼ら」がまだいない……のを、僕は毎日のように、ひそかに確認していた。
それは、彼らがまだ生きている、ということでもあり、したがって、まだ苦しみ続けているということでもある。
――フランソワーズ。
暗黒の中にぽっかりと浮かぶ美しい青い惑星。
絶望と悲しみに包まれても、終焉を告げられても、輝きを失わなかったその色は、僕にいつでも彼女の瞳を思い出させた。
フランソワーズ。
きみは……そこに、いるのか?
驚くほど早く、全ての人々の関心が「青の惑星」に集まった。
仕方がないと諦めてはいても、やはり誰もがあの惑星に思いを寄せていた。
取り戻せるなら、一刻も早く取り戻したい。
僕たちの願いは、瞬くまにひとつになり……「青の惑星」を包んだ。
帰っておいで。
帰っておいで……ここに。
きみの、本当の故郷に。
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