しゃりしゃり、と音がして、フランソワーズの白い手から、細くて真っ赤なリンゴの皮がどんどん流れ落ちてくる。
なんか、スゴイなあ……
いや。
リンゴくらい、僕にもむけるしね。
張大人ならもっと上手にむけるだろうな。
でも、何だろう。
なんか、スゴイ…って思う。
リンゴって、いい匂いだよな。
そんなに大好きってわけじゃないけど、この匂いは好きだ。
特にむきたての匂い。
…なんて、見てるうちに、リンゴはキレイに八つに割られてしまった。
真っ白だ。
リンゴも、彼女の手も。
ああ、でもその手にリンゴの汁がいっぱいついてる。
早くふかないと、そのうちべとべとしてくるのに。
僕なら、舐めちゃうけどな。
…………。
って。
何考えてるんだ、僕は。
「どうしたの、ジョー?」
どうしたのって…どうもしてないよ、僕はその…ええと、とにかく。
変なことなんて考えてないし、僕が思ったのはただ、おいしそうだって…うわ、違うってば、そう、もちろんリンゴがだよ!
ああもう、とにかく、早く何か言わなくちゃ!
…………。
自分が何を口走ってしまったのかはいまいちわからない。
フランソワーズは呆れ顔で口をつぐんでいる。
でも、驚いてない…ってことは、しょーもないことだけは言わずにすんでた…ってことかな。
よかった。
…ええと。
クビクロの散歩、いってこようかなあ…。
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