ホーム はじめに りんご 結婚式 メール お泊まり準備 お守り袋 これからどうするの? 383934 Who are you?
介護のお仕事 街頭インタビュー 百合男子?

原作
 
 
ポケットからリンゴを取り出した。
いつもの海岸の「訓練場」。
ここで、僕は戦いの技術を磨く。
いつか来る「その日」のために。
 
003はこの場所のことを、たぶん知っている。
僕が、昼も夜も、何度もだまって研究所を出て…結構心配をかけたから。
きっと、彼女は最後の最後に「目」を使ったんだろう。
そう思うと申し訳なかったと思う。
 
ちゃんと話せばよかったんだ。
 
こういうの、君は嫌いだろうと思った。
君を悲しませるだろうとも思った。
だから、話さなかった。
 
でも、君が「目」を使って、その挙げ句、こんな僕の姿を見たというのなら…
やっぱり、話しておけばよかったんだ。
僕は、いつもそういうところで間違える。
 
真っ赤なリンゴ。
じーっと見つめる。
 
かじったら、真っ赤ではなくなる。
この丸いきれいな形も崩れてしまう。
…ちょっと、かじりにくい。
でも。
 
さく、と音がした。
甘酸っぱい香りが広がる。
 
君が「目」を使ったときに見えたのが、せめてこんな僕の姿だったら。
それなら、少しはよかったのにな。
でも、今君は僕を見てはいないだろう。
 
どんどんかじる。
 
芯もできるだけかじって、最後は海に向かって放り投げた。
それから、甘い汁で汚れた手をシャツにこすりつけて……
 
君が僕を見るのは、たいていこういうときなんだ。
本当に、間が悪いんだよな。
 
…でも。
 
だから、僕はわかっている。
こうやって、ずうっとココに座っていれば、君がしびれを切らしてやってくるってことも。
シャツの染みがとれなくなるのを心配して、ぷりぷり怒って。
 
君を心配させて申し訳ないといつも思ってる。
でも、本当に僕は君を心配させているのかどうか、どうしても確かめたくなるときがあるんだ。
 
それが、たとえばシャツの染みであったとしても……ね。

PAST INDEX FUTURE

ホーム はじめに りんご 結婚式 メール お泊まり準備 お守り袋 これからどうするの? 383934 Who are you?
介護のお仕事 街頭インタビュー 百合男子?