ホーム 009的日常 更新記録 案内板 日常的009 非日常的009 日本昔話的009 009的国文 009的小話 学級経営日記
玉づと 記念品など Link 過去の日常 もっと過去の日常 かなり過去の日常 009的催事

記念品など

「相剋」論4 上 
「相剋」論4
〜禁断のひよこ〜
 
 
 
1、家刀自のひよこ
 
「相剋」番外編「極北の地にて」は、それはもう009&タイラント♪のお花畑というかぱらだいすというか……という世界なのだけど。
でも、003もちら♪と見え隠れしたりするのだった!
 
前編では、009不在の中で、絶体絶命の北海基地戦を切り抜けようとするとき、「相剋」本編でも見たような「リーダーの決断」をさりげなくする003が登場する。
 
中編では、タイラントとの逢瀬(え)に旅立つ009のために、服を用意してあげる003が登場する。
注目すべきなのは、003がタイラントの分まで服を用意し、それを009に託している、ということだ。
中編が発表されたとき、3至上主義者としてのチェックポイントは当然ココだった。
なんだか、ひっかかる場面なのだった。
 
それは、つまり恋敵…ってか側室に会いに行こうとする夫の身支度を調え、土産物まで持たせてやる正室…みたいな感じというかなんというか<?
この感じは、今思うとちょっとズレつつも、微妙に当たっているのかな…と思う。
 
そして、今回の後編!
決定的な場面が、登場したのだった!
それはもちろん、
 
ひよこパジャマ(倒)
 
実際のところ、necromancerさまに
 
「どーしてこーゆー場面が挿入されているのですか?その意図は?」
 
と質問しても、おそらくは
 
こーゆー場面だったのでこーゆーふうに書きました。
 
としか返ってこないような気がする(しみじみ)
でも!
だったら、そう考えればいいのだった。
 
ココは、こーゆー場面でなければならない!
 
…のだ。
つまり、009&タイラントの関係(倒)いちいち倒れるな!を表現しようとするとき、どーしてもどーしてもこのひよこパジャマは必要アイテムなのだ。
欠かすことができないから、描かれている。
そう考えるべきだろう。
 
ひよこ柄のパジャマ。
 
なんというか、あまりに唐突で、不条理ですらあるこの柄に、読者としてはついつい「意味」を求めたくなってしまう。
たとえば、コレは場を和ませる…というか微笑を誘うためのアイテムなのではないか?とか。
 
そう考えることもできるのだけど、作者がnecromancerさまであるということを思うと、そうではない、とした方がよいと思う。なんとなく(しみじみ)
 
むしろ、不条理は不条理としてそのまま受け取るべきだろう。
不条理なのだから、そこに意味はない。
意味がないというところに意味があるのだった。
 
この物語を読み返したとき、一見、このひよこパジャマエピソードには何の意味もないように見えるのだった。
でも、それにしては結構多くの字数が費やされている。
だったら、丁寧に見ていくべきなのだった。
何の意味もないように見えるのなら、それが書かれた意味は、おそらく意味の外にあるからだ。
 
丁寧に見てみると、こんなことに気づく。
 
a ひよこパジャマは003の手作りである。
b ひよこパジャマは完璧な着心地のパジャマである。
c ひよこパジャマは「全員」に同じモノが贈られた。
d ひよこパジャマは003の所に受け取りにいかなければならなかった。(少なくともタイラントは)
e ひよこ柄を選んだのは003。009が色だけ選ばせてもらっている。
f ひよこパジャマは「全員」が無条件で受け取らなければならない。(と009は思っている)
g ひよこパジャマはパジャマなのだから、自分に似合うかどうかを考える必要などない。ただし、恋人と夜をすごす時についてだけはそうではない。(と009は思っている)
h そもそもなぜひよこパジャマが「全員」に贈られなければならなかったのか、ということについての説明は全くない。
 
いずれも、かなり興味深いポイントなのだった。
やはり、始めに注目すべきは、cだと思う。
 
手作りパジャマ。
それを、003が想い人への贈り物として、009に贈った、というのなら、不条理でもなんでもない。
ひよこ柄だって、009には似合っているらしいし。
お嬢さんったらお茶目♪(らぶらぶ!)とか解釈するのがいいのだと思う。
 
わけがわからないのは、なんといっても「みんなおそろい♪」ということなのだ。
この場合、「全員」の範囲はどーなっているのか、というと、
絶対に確実にその中に入るのは、ゼロゼロナンバーサイボーグたちとタイラント、だ。
 
ただ、はっきり書かれてはいないが、タイラントのパジャマ製作のとき、003がウィッチに相談している…ということは、ひよこパジャマはライたちの分も作られたと考えるのが自然かなーとも思う。
が、
 
「ウィッチから聞いてない? もう随分と前になるけど、フランソワーズが、全員分のパジャマをお揃いで作ったから取りに来いって連絡、した筈だけど?」(「極北の地にて 後編」)
 
という009の台詞を見ると、微妙に違和感もある。
「取りに来い」というのは、もちろん、特にタイラントにあてての言葉ではある。
この物語の後ろには、どーにかして009とタイラントを会わせたい、と考える周辺の人々がいて、その中には当然003も含まれているからだ。
 
が、もし、ひよこパジャマがライ達の分まで作られていたのなら。
ライ達がいちいちパジャマを取りに日本まで行ったとは考えにくいし、仮に、彼らには郵送なりなんなりされて届けられていたのだ…とすると、それに、タイラントが気づいていない、ということがあるだろうか???(悩)
 
一応、ある、といってよい。
それは、gで009が言っているように、ひよこパジャマは人前で着るものではないからだ。
 
結局、「全員」にライ達が含まれるのかどうかは、よくわからない。
が、含まれない可能性…パジャマが贈られたのは、ゼロゼロナンバーサイボーグたちとタイラントのみだった、という可能性…もある、ということについては確認しておきたい。
もちろん、どちらにしても、彼らにそれが贈られた、ということには変わりない。
 
さて。
そこで、「みんなおそろい♪」に戻る。
 
003は、なぜ、そんなパジャマを作ったのか?
 
が、やはり、激しく疑問なのだった。
繰り返しになるが、想い人009のために♪と考えるなら、「みんなおそろい♪」はおかしすぎる。
 
想い人に手作りパジャマを贈るなら、いくら成り行き上(?)彼だけに贈るわけにいかない事情があるのだとしても、まったく同じおそろい♪のモノを贈る必要などない。
009の分だけ色が違うとか柄が違うとかデザインが違うとか、何か差異をつけるのが、むしろ恋人的な在り方だろうと思う。
 
だから、003は、文字通り「全員」のためにパジャマを作ったのだとしか考えられない。
そして、その「全員」の中で、009は特別扱いにならないのだった。
 
これは、恋人としての在り方ではない。
003は恋人として009を見ているのではなく、「全員」を見ているのだった。
それはつまり、ゼロゼロナンバーサイボーグという共同体に対する003の在り方、と考えるべきだと思う。
003は、共同体全体にパジャマを作ってあげる、という立場にあるわけで。
それは、つまりその共同体を統べる「主婦」としての…「家刀自」としての立場だ。
 
もう少し丁寧に言うと、003はゼロゼロナンバーサイボーグという共同体そのものの妻であり、母であるということである。
もちろん、幻想上での話なのだが。
 
そして言うまでもないが、009はゼロゼロナンバーサイボーグという共同体の長である。
こう考えると、ここでの009と003の関係は、王権と巫女の関係に似ているのだった。
古代の皇室でいうなら天皇と齋宮だし、necromancerさまの作品でいうと、シーアとクゥ・リスィアに近いかも。
 
009と003は恋人同士(または夫婦)で一応よいのだけど、個人として恋愛関係で結ばれているわけではない。
もちろん、現実に、彼らの間に個人としての恋愛関係・恋愛感情がないと言うのには無理があるが、それは二義的なものであり、第一にはあくまで共同体を代表するモノとしての幻想上の恋人同士…というのが、009&003の在り方である。
 
ひよこ柄には意味がない、と考えるのが正しいと私は思う。
個人が想定する意味を越えたところに、共同体の意志はある。 
誰にも似合わない(009を除いて)ひよこ柄の意味が何かあるとしたら、それは共同体の構成員全ての個人としての意志よりも、家刀自の絶対意志の方が無条件で受け入れられるべきものなのだ、ということを示すところにあるだろう。
だから、009は共同体の長としてきっぱりと言う。他の選択肢はない、と。
 
ただ、意味ではなく、シンボルとしての機能をひよこ柄に見ることはできるかもしれない。
003はメンバーたちを「私のひよこ」として等しく慈しむ立場にある、ということを、私たちはその柄から知ることができる。
彼女自身にそうした意図があったとは考えにくいが、物語が「ひよこ」に何かメッセージをもたせるとしたら、それだろうと思う。
 
とりあえず、ここをスタート地点にしようと思う。
ここに命綱をくくりつけ(?)3至上主義者は、いよいよジョーら部の花園へと踏み込むのだった!<?
 
 
 
2、十人目の仲間
 
さて。
ひよこパジャマを家刀自003からの賜り物なのだと考えると。
それをタイラントが「取りに来い」と言われた、ということにはかなり大きな意味がある。
ライ達にパジャマは贈られなかったのではないか、と私が思う根拠もそこにある。
 
009は言う。
 
「あぁその柄は、彼女の趣味だから。どうしても気に入らないってんだったら、彼女に言ってみてもいいとは思うけど……。でも、せっかく全員のをお揃いにしたのに、君だけ別にしてくれっていうのは、どうなのかなぁ……?」(「極北の地にて 後編」)
 
やんわりとした言い方ではあるが、彼は、タイラントに「文句を言うな」と言っているのである。「全員のをお揃いにした」の「全員」の中に、タイラントは否応なく組み込まれている。
 
009の言葉からは、そもそもこのパジャマを作ったのは003の意志だ、ということもうかがえる。003はタイラントを「全員」の中に数えているのだった。
…と考えると、思い出すのは「相剋」本編の、あのシーンである。
 
「…ほんとうに、ありがとう。ジョーを守ってくれて。私達にできなかった事をしてくれて……」
すっと003は手を差し出した。
「はじめまして。003…フランソワーズです。どちらでも、お好きな方で呼んで下さい」
タイラントは目を丸くして、003を見た。差し出された手を見、003の顔を見る。
そして。
躊躇いがちに手を出すと、おっかなびっくり003の手を取った。
「……タイラント…だ……」
「歓迎します。あなたを…十人目の仲間として……」(「Act.8 明かりを灯すもの」)
 
この003の台詞を家刀自の台詞として読み直してみると、なんと含蓄のある言葉だろう、と思う。
 
009はタイラントを「僕の友達だ」と、003たちに紹介した。
「仲間」と言ったわけではない。
だから、タイラントを「仲間」と初めて名付けたのは003なのだ。
そして、彼女は彼を「十人目の仲間」と呼ぶ。
 
十人目の仲間とは何か。
ヒントは、彼女の台詞の中にある。
タイラントは、003たちに「できなかった事」をしたのだ。
そこがポイントだと思う。
 
そして、もう一つのヒントは、突拍子もない所にある。(涙)
私事になるが、私の弟は、先日、千葉県が誇る(?)某プロ野球球団の
 
26番目の戦士
 
となったのだ!
と、さも得意そうに私に告げた。(倒)
 
…………。えーと(涙)
 
馬鹿馬鹿しいようだが、コレはヒントになる、と私は思う。
26番目の戦士は、26番目と数えられ、戦士として認められる一方、他の25人とは全く違う地平に立つ。
弟がマリンスタジアムのグラウンドに降り立つことは、おそらく永遠にない。(しみじみ)
にもかかわらず、彼は「26番目の戦士」なのだ。
 
…………。えーとえーとえーと(涙)
 
そして、弟は、誇らしげにその戦士の証を姉に見せるのだった。
言うまでもないが、それは背番号26がついた、千葉ロ○テマリーンズのユニフォームで(汗)
 
…………。えーとえーとえーとえーと(涙)
 
我ながらとても言いにくいのだけれど。
つまり、ひよこパジャマは背番号26ユニフォームのようなものなんじゃないかなーと。(弱気)
 
こう言ってしまうと非常にうさんくさい感じがする。
でも、003は言った。
タイラントが十人目の仲間としてしたことは、彼女たちにはできない事なのだ、と。
もちろん、それは彼女たちがそれまで物理的に009の傍にいることができなかった…ということを表面上は意味している。
 
が、それだけではない。
それだけではない、と、「極北の地にて」は語るのだった。
 
タイラントは、003たち…ゼロゼロナンバーサイボーグたちにはできない事ができる。
というか、しなければならないのだ。
もし、彼が十人目の仲間として、009と共に生きようと願うのならば。
 
ついでに、「極北の地にて」を003&タイラントに注目しつつ見ると(無理があるのだけど)先にちょっと触れた、北海基地での戦いを思い出すことができる。そして、彼の位置はやはり00ナンバーたちと違っていることがわかるのだった。
 
絶体絶命の戦いの中で、タイラントは、決断する。
 
『001をここに呼んで、北海基地を叩く。そして、別働隊がウラル研究所に攻撃をかける前に、戻る』
危ない賭けなのは判っている。だが、他に手があると言うのか?
そう言うタイラントに反論できる者も無く……。
『……やりましょう。それしかないわ……』
003が頷いて立ち上がり、そして、その作戦は実行に移された。(「極北の地にて 前編」)
 
タイラントの提案には、002がとりあえず「反対」している。
このことは、危険を冒し001を呼ぶという作戦が、009を除く00ナンバーたちからは出てこない発想だった…ということを示しているだろう。
しかし、003は即座にそれに頷く。
そして、彼女が頷いた結果に、00ナンバーは無条件で従うのだった。
 
…ってことは。
このときのタイラントは、009であった、と言ってもよい。
そして、タイラントはやはり003によってそう認められた、と考えることもできる。
 
「相剋」の00ナンバーたちにおいて、重要な決断は常に「長」である009が下している。
一方、003はそれを受け入れることによって、その決断に、他メンバーたちを無条件で従わせるような、そしてそれは必ず成功する、と無条件で確信させるような、ある種の「力」を与える。
 
「相剋」本編で、009不在のとき、004がリーダーとして相当苦しんだのには、それも関係していると私は思う。
003は当時、物語から消えていた。それはつまり、彼女が004を「長」として認めなかったのだ、ということを意味しているのかもしれない。
そして、003に認められなければ、共同体の長にはなれない。だから、004は苦悩せざるを得ない。
 
003はタイラントを、自分たちの外側に在るモノと位置づけ、しかし同時に「仲間」である、と位置づけた。その上で、009不在のときには、彼を「長」と認め、その決断を受け入れるのだった。
共同体の長である009の代わりは誰にもできない。彼女自身にも。
が、それがもし、共同体の外のモノならば。
 
「十人目の仲間」には、そういう意味もあると思うのだった。
 
更新日時:
2007.08.11 Sat.
prev. index next

ホーム 009的日常 更新記録 案内板 日常的009 非日常的009 日本昔話的009 009的国文 009的小話 学級経営日記
玉づと 記念品など Link 過去の日常 もっと過去の日常 かなり過去の日常 009的催事


Last updated: 2015/11/23