私は、私自身を許さない。
だから、あなたの傍からもう二度と離れない。
この命が、尽きるときまで。
私、本当はわかっているわ。
003が何をしなければいけないのか、どうあらねばいけないのかを。
誰かを助けるために、自分の命を賭けなければならない私たち。
それが、ヒトとかけ離れたモノでありつつ、ヒトとして生きるための、私たちのただひとつの道だから。
だから、あのとき003が009を撃ったことに、何も間違いはなかった。
私には、助けなければならない大勢の人たちがいて、そのためにはああするしかなかった。
それに、いつもの009なら、あれはむしろチャンスだった。敵は、私たちの力とチームワークを侮り、完全に油断していたのだから。
その隙をついて攻撃し、勝利する。それが、いつもの私たちだった。
あなたは倒れたけれど、運が悪かっただけ。
そうでなければ、加速装置のトラブルに気づかないまま作戦を立ててしまった009のミス。
だから、あなたはこともなげに言う。君のせいじゃない、と。
あなたは、強いわ、009。
それを感じるたびに、強くない自分が辛くなるの。
ひとりでは何もできない私……003。
もちろん、そうするしかないのだと、それが私の役目だとわかっているわ。
私は全てを見て、全てを聞いて、あなたに伝えて、あとは待っているだけ。
私は、何も間違ったことをしなかった。
あのとき、あなたの目は私に撃て、と言った。
だから私は、あなたが一番動きやすい瞬間を「眼と耳」で測り、あなたが望む完璧なタイミングで撃った。
あなたの言うとおりよ、009。私は、悪くない。
でも、それが何だっていうの?
そう叫んで逃げ出した私を、あの人は叱った。
彼の許に戻れ、愛を信じろ、彼を愛する自分を信じろと。
どんなに苦しくても、それが、愛してしまった者がしなければならないこと。
愛してしまったのなら自分を信じるしかない、できなければあらゆる愛の行方には破滅があるだけ。
そう、私は、003でありながらあなたを愛するフランソワーズでいることができるわ。
誰が認めなくても、神が許さなくても、あなたがそれを必要としなくても。
ただ、私が信じれば……あなたを愛する私がここに確かにいる、あなたへの愛はここに確かにあると信じれば、それだけで私はフランソワーズでいることができる。
だから今、私はこうしてあなたの許に……いいえ、そうじゃない。
私は多分、そんなに強い女じゃない。
私が信じているのは、きっと、儚い幻。
あなたの鋼の意志の奥にわずか揺れる、すがるような色。
愛してくれ、傍にいてくれ、僕を信じてくれと瞬く切ない光。
そんなものが本当にあるのかどうかは、わからない。
あなたは何も言わない。
……でも。
ありがとうと包んでくれるあなたの腕が、ごめんねと髪を撫でるあなたの手が、甘える子供のようなあなたの吐息が、私を慰めてくれるから。
だから、私はあなたの傍にいられるの。
いつか、破滅が来るのかしら?
僕を信じろと決して言わないあなたと、自分を信じると思い切れない私。
いつか、引き裂かれた私たちは思い知るのかもしれない。
あれは、愛ではなかったと。
私があなたにあげられる確かなものは、愛ではなく、ただ私というひとつの命だけ。
それが愛だとあなたが信じていられるように……最後の時まで信じていられるように、私は二度とあなたの傍を離れない。
今日も、泣きたいほどの愛しさに耐えきれず、ただそれだけであなたを抱きしめてしまう私。
あなたを守る003でも、あなたを愛するフランソワーズでもない私。
私は、こんな私を許さない。
だから、そんな顔をしないで、ジョー。
私は永遠なんていらない。
ただ、あなたが……
今は、あなたがいることが、それだけが私の全てなの。
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