1
待つことは…残酷かしら?
私は、あなたを苦しめているかしら?
誓いは…なくてもよかったの。
あなたには、やらなければならないことがあって
行かなければならないところがあった。
愛さなければならない人がいた。
誓いは…なくてもよかったの。
わかっていたから。
あなたにはわからないやり方で、私はわかっていた。
あなたは…きっと帰ってくるわ。
私のもとへ。
でも。
あなたは誓った。
必ず帰ってくる。
君を離れて…生きてはいけない。
僕のフランソワーズ。
君だけを愛している。
待っていて、僕を。
あなたが誓ったから、私も誓った。
待っているわ、ジョー。
あなたが…どこにいても、何をしていても。
いつまでもあなたを想ってる。
本当に、誓いは…なくてもよかったの。
わかっていたから。
誓いは…いつか破られる。
生まれたものは、いつか死ななければならないでしょう?
それを…誰よりもよく知っている私たちだったのに。
私は…あなたを苦しめているかしら?
待つことは…残酷かしら?
2
あなたは…
自分の身を投げ出して、命を惜しむことさえしないで、
やらなければならないことをした。
行かなければならないところに行った。
愛さなければならない人を愛した。
…あなたの声がきこえる。
僕が愛しているのは、君だけだ…フランソワーズ!
そんなに悲しい顔をしないで。
そんなに苦しそうに言わないで。
あなたは…帰るわ、私のもとに。
わかっていた。
誓いを破るのは…私。
あなたが走ってくる。
苦しそうに…息を弾ませて。
今すぐ教えてあげたい。
もう帰らなくていいと…捜さなくていいと。
あなたは、そこにいていいのよ。
もう苦しまなくていいの。
誓いを破るのは…私なの。
あなたが走ってくる。
足音が聞こえる。
誓いを破ったのは私。
誰も気づかない。
あなたも…気づかない。
3
荒野を走り続け、捜し続けて
疲れ果てたあなたは、寂しく繁った草の中で
とうとう私を見つけた。
痩せ細った私を抱きしめて、あなたは声を上げて泣いた。
許して、フランソワーズ!
僕は君を裏切った。君を守れなかった。
君は…待っていてくれたのに。
いつも…僕を想ってくれたのに。
僕は、君をこんなところに放っておいて
ひとりぼっちにして
こんなに…傷つけて。
そうよ、ジョー。
私は…あなたを待っていた。
いつもあなたを想っていた。
私の…すべてをかけて。
でも…私は誓いを破ったの。
泣き疲れて
子供のように眠るあなたを草の中に残し
もう…行かなければならない。
あなたは…きっと気づかない。
もう十分に苦しんで、悲しんで…
それなのに、まだ苦しまなければならないの?
私はあなたを待っていた。
いつかこうなると…知っていたのに。
それでも、待たずにいられなかったから。
だから…
誓いは…なくてもよかったの。
さようなら、ジョー。
こんな残酷な裏切りに…あなたはきっと気づかない。
せめて、そっと…教えてあげられたら。
誓いを破ったのは…私だと。
4
「フランソワーズ…?」
眼をあけると…震える茶色の瞳が見つめていた。
体が…重い。
起きあがろうとした私を慌てて支え、彼はそのまま私を堅く抱きしめた。
泣いているの?ジョー…どうして?
「よかった……」
それだけ…やっと聞き取れた。
ああ…そうだったわ。
逃げ遅れて…レーザーを浴びて…それから、私…
唇が重なった。
涙の…味。
そんなに泣かないで…ジョー。
いつか…本当に私が目覚めない朝は来るわ。
きっと来るって…わかっている。
そして、それはあなたのせいじゃない。
でも、私にはこうすることしかできないの。
あなたを見つめて。
あなたを想って。
いつかあなたを苦しめるだけなのに。
ここから離れられない。
だから…せめて。
誓わないで。
このまま、私をここにおいて
そして…信じて。
何も気づかないまま。
私は…いつもここであなたを想っている。
確かめになんてこないで。
遠くから…ただ信じていて。
いつまでも…待っているから。
…そう信じて。
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