ジョーくんは、女性に甘いらしい。
…と言われると、たしかにイロイロと思い当たるフシもある。
でも。
何か違うような気もする。
とはいえ。
「女性に甘い」とでも言わなければ、いや、そう言っても、なんだかわからない行為をすること…が、彼にはある。
たとえば。
「風の都」篇とか。
イシュキックに「来て!」と言われて、行っちゃうジョーくん。(汗)
…わからん。(涙)
フランソワーズが必死に止めていたが。さすがである。
他のヒトたちは、ぼーぜんとしてたもんな。(笑)
さすがに、彼をよく知るフランソワーズ、
「これはヤバいわ!」と直観したに違いない。
嫉妬…というより…
「馬鹿なことはやめなさいっ!」って感じだったのかも。
馬鹿なことだよなあ…(しみじみ)
ってか、わけがわからない…というか。
後になって、ジョーくんは言い訳する。
イシュキックに強いられた過酷な運命について。
それはわかる。
熱弁するジョーくんはめっちゃ愛らしいし♪
でも。
わかるけど、わかんないぞ、ジョーくん(涙)
…ってことはさ、君は。
一人ぼっちで気が狂いそうな女の子(じゃなくてもいいんだが)を見つけちゃったら、とりあえず側にいてやる(彼女とともに暮らす)…わけか???
「来て!」って言われたから…行くのか???
おいおいおいおいおいおいおい〜
わからないよ、おまえ〜〜(涙)
…という具合に、わけわからなくなるので、私は長年コノ問題については、ほっかむりしていた。
が。
何かわかったような気がしたのは…
監督:理恵さま&執筆:necromancerさまの、「あの」小説…『相剋』を読んだときだった。
『相剋』は、necromancerさまのサイト「幻想海悠園」の「企画展示室」にありますです。
そ、そうか…「利他主義」。
度を超えた、非常識な…常人には理解不能な利他主義…そうかっ、そういうことなのか〜っ!!
深く深く納得した。
凡人たる私に、彼の行動が不可解だったのは…当たり前だったのだ。
それこそが、ジョーくんであり、彼の凄さでもあるのである。
ってことで。
思い出したのが、「奉教人の死」の…ろおれんぞ…である。
もし、もしも。
「日本文学史上、もっともジョーくんな登場人物をあげよ」
と言われたら。(言われないって)
それは…こいつだ。
ろおれんぞしかいない。(たぶん)←ちょっと弱気(笑)
「奉教人の死」は芥川の中でも、2番手くらいにメジャーな小説だと思うが…
一応、ストーリーを。
ろおれんぞは、長崎の教会(えけれしあ)の戸口に、クリスマスの晩、行き倒れ…していた美少年である。
時代は…作品中では未詳だが、おそらくキリシタンが禁制になる直前くらいの頃…と思われる。
何故かその身の素性を問へば、故郷は「はらいそ」(天国)父の名は「でうす」(天主)などと、何時も事もなげな笑に紛らいて、とんとまことは明した事もござない。
出生は…謎。
ごまかし方は、ジョーくんらしからぬ感じだが…
「事もなげな笑」…(倒)
…気を取り直して読む。(汗)
ろおれんぞは、ものっすごく信仰心が厚くて、品行方正で、天童の生まれかわりのようだ…ってことで、教会で大事にされて暮らしていた。こんなだった。
して又この「ろおれんぞ」は、顔かたちが玉のように清らかであつたに、声ざまも女のやうに優しかつたれば、一しほ人々のあはれみを惹いたのでござらう。
そりゃもお…顔は言うまでもないし。
声は…井上さん?櫻井さん?(やめれ)
で、このろおれんぞをとってもとっても弟のようにかわいがっている兄ちゃんがいた。
しめおん、という兄ちゃんである。とにかく、なかよし♪で、力持ちで立派な体格の兄ちゃん。だもんで、この二人がなかよくしている様子は、
とんと鳩になづむ荒鷲のやうであつたと申さうか。
とか言われてしまう(笑)
やっぱ…これってジェットかアルベルト???←なぜだ(笑)
風貌にやや無理があるが…後の言動を見てると、ジェット…って感じがしたり。(?)
で、そうやって、ろうれんぞは、つつましく幸せに教会でくらしていたのである。
ところが。
やっぱりというかなんというか。
彼に思いを寄せる娘が現れる。
傘張りの娘…一応、教会にやってくる信者だったりするのだが。
女性とどうこうするのは、教会ではご法度。
やがて、ろおれんぞと娘との関係がとやかく噂されるようになる。
ろおれんぞは、何もない…と、ひたすら噂を否定するが、決め手となる説得力はない。
とうとう、しめおんまで、ろおれんぞを責めちゃったりする。
すると、ろおれんぞは。
「ろおれんぞ」はわびしげな眼で、ぢつと相手を見つめたと思へば、「私はお主にさへ、嘘をつきさうな人間に見えるさうな」と、咎めるやうに云い放つて、とんと燕か何ぞのやうに、その儘つと部屋を出つて行つてしまつた。
これは…キツイでしょう、しめおん…(涙)
だって、ジョーくんだぞ。
ジョーくんに、こんな風に見つめられて、こんなこと言われて、置き去りにされちゃったら…
首つりたい気分になってきただろ〜、ジェット?(笑)
…が!
この後が、もお、本っ当にジョーくん♪なのである。
しめおんが、自らを恥じ、しょんぼりその場を去ろうとすると…
いきなり駆けこんで来たは、少年の「ろおれんぞ」ぢや。それが、飛びつくやうに「しめおん」の頸を抱くと、喘ぐやうに、「私が悪かつた。許して下されい。」と囁いて、こなたが一言も答へぬ間に、涙に濡れた顔を隠さう為か、相手をつきのけるやうに身を開いて、一散に又元来た方へ、走つて往んでしまうたと申す。
…よく、腰が抜けなかったよな、ジェットもといしめおんよ…(涙)
私だったら、もお立っていられない…と思う。
なのに…ジェットったら。
ジョーくんが、自分にヒドイことを言ったのを謝ったのか、娘と密通してたのを隠してるのを謝ったのか、これじゃわからない…
なんて思ったりするんだから〜(涙)
大馬鹿者〜!!>ジェット(違うって)
さてさて。
やがて。
とんでもないことに…その娘、身ごもってしまう。
でもって、「父親はろおれんぞだ!」と爆弾発言をする。(涙)
ジョーくんもといろおれんぞは、教会から破門され、追い出される。
しめおんは、しょんぼり教会を出ようとするろおれんぞを殴り倒しちゃったりする(涙)
ろおれんぞは、涙ぐんで、神さまに、「こんなことをするしめおんを許してください」みたいな事を言う。これって、こう言ってしまうと、かなり嫌みに聞こえるが。キリスト教の祈りの決まり言葉で、本来はもっと慈愛に満ちた響きなんだと思われる。
時しも凩にゆらぐ日輪が、うなだれて歩む「ろおれんぞ」の頭のかなた、長崎の西の空に沈まうず景色であつたに由つて、あの少年のやさしい姿は、とんと一天の火焔の中に、立ちきはまつたやうに見えたと申す。
夕日の中でうなだれるジョーくん〜〜(倒)
ここっ!ここで、「ジョー、待って!!」と誰も止めなかったってことは。
彼らの中に、フランソワーズがいなかったのだけは間違いない(涙)
でも…
フランソワーズでなくても…止めてやれよ、誰か…(しくしく)
その後。
教会を追われ、住む場所も収入も失ったろおれんぞは、町はずれで、見るも哀れな乞食として過酷な生活に耐えていく。何度も死にそうになるものの、神の加護か、かろうじて生き延びていき…その信仰心も変らなかった、という。
娘は、女の子を産む。
しめおんは、その女の子をとってもかわいがり、涙を浮かべてろおれんぞを思い出したりする。
そんなある日。
長崎を大火が襲う。
娘の住む家は、火に包まれ…家の中には、その赤ん坊が取り残されてしまった。
半狂乱になって、家に飛び込もうとする娘を押え、人々はなすすべもなく。
かけつけたしめおんも、燃える家に入ろうとしたが、猛火にはばまれて、できなかった。
そのとき。
「御主、助け給へ」と、高らかな声をあげ、ジョーくんもといろおれんぞが現れた。
清らかに痩せ細つた顔は、火の玉の光に赤うかがやいて、風に乱れる黒髪も、肩に余るげに思はれたが、哀れにも美しい眉目のかたちは、一目見てそれと知られた。その「ろおれんぞ」が、乞食の姿のまま、群がる人々の前に立つて、目もはなたず燃えさかる家を眺めて居る。と思うたのは、まことに瞬く間もない程ぢや、一しきり焔を煽つて、恐しい風が吹き渡つたと見れば、「ろおれんぞ」の姿はまつしぐらに、早くも火の柱、火の壁、火の梁の中にはいつて居つた。
さすが、ジョーくん〜(涙)
…でも、ろおれんぞはサイボーグでわない。(汗)
ろおれんぞは、奇跡的に、赤ん坊を救い出した。
崩れ落ちる梁の下敷きになりながら、最後の力を振り絞って赤ん坊を放り投げる。
しめおんが、立ち上がった。
彼は、猛火の中に飛び込み、ろおれんぞを抱いて脱出した。
人々は、やはりこの赤ん坊はろおれんぞの子だったのか…さすが、父親…みたいな感じで、感嘆半分、軽蔑半分…って感じで見ていたのだが。
無事だった赤ん坊を抱きしめた娘が、涙ながらに叫ぶ。
この子の父親は、ろおれんぞではない。
何度言い寄っても、彼につれなくされたのが悔しくて、私は嘘を言ったのだ。
娘は懺悔し、ろおれんぞを称え、それにひきかえ、自分は…と、泣き崩れる。
ぼーぜんとしていた伴天連(神父)は、話をまとめに入る(笑)
娘の罪を許し、焼けただれ、死にかけているろおれんぞを称えようと…するが。
ここまで申された伴天連は、俄にはたと口を噤んで、あたかも「はらいそ」の光を望んだやうに、ぢつと足もとの「ろおれんぞ」の姿を見守られた。その恭しげな容子はどうぢや。その両の手のふるへざまも、尋常の事ではござるまい。おう、伴天連のからびた頬の上には、とめどなく涙が溢れ流れるぞよ。
…というのは。「ろおれんぞ」は、実は。
サイボーグだった。(笑)←わけないだろっ!(怒)
ここで、残念ながら、ジョーくん=ろおれんぞ妄想は崩壊する…のだが。
いや、そんなことないっ!これでいいのだっ!
実はジョーくんも……(おい)
とか叫んでる自分がいたりしたりたりたり。(笑)←よせ
とにかく。
この、ろおれんぞの、わけのわからなさ…
ジョーくんに勝るとも劣らない(涙)
でも、だからこそ、人は感動する。私も、何度読んでもうるうるしてしまったりする。この話は。←こんなことやっといてか?(汗)
だから…いいのだ。
ジョーくんは、これで。
わけわからないけど。
それが、ジョーくんなのだっ!!!
そして。
こうして見てみると、ジョーくんが、追放もされず、乞食にもならず、死なないで、一応主人公やっていられるのは…
ひとえにフランソワーズのおかげであろう。(笑)
ちなみに…
もし、ろおれんぞの傍らに、フランソワーズがいたら…
フランソワーズは、誰が何と言おうと、一人、懸命にろおれんぞを庇っただろう。
そして、いよいよ追放…となってしまったときは…ろおれんぞと一緒に教会を離れただろう。
娘とのコトは何も聞かないまま。(涙)
で、フランソワーズの方が、ろおれんぞよりは世渡りできそうだから(笑)二人の暮らしは少しはマシだったかもしれない。
そして。
炎に飛び込もうとするろおれんぞを、フランソワーズは必死で止めようとした…はずだ。
でも…その決意のほどを知り、ほんの一瞬、ひるんだとき…
ろおれんぞに振り払われてしまう。
やがて、彼女が見たものは。
焼けただれたろおれんぞと、その真実の姿…(涙)
可哀想すぎるぞっ!!フランソワーズ〜!!!(涙)
ほんっと…ジョーくんに関わってると不幸になるって…(しみじみ)
考え直してみないか?誰も責めないぞ。>フランソワーズ(涙)ホントか?(笑)
本文は、『芥川龍之介全集 1』(筑摩書房)より。
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